株式会社コミュニティ・クリエイション

株式会社コミュニティ・クリエイション

まちづくりを起点としたIT事業の展開

東京都三鷹市の第三セクターとして、1999年9月に創立された株式会社まちづくり三鷹(以下、まちづくり三鷹)は、三鷹市全体のまちづくりを総合的に支援することを目的に多種多様な事業を展開している。その事業のひとつに「SOHO CITYみたか構想の推進」がある。この事業では、三鷹市内に敷設された光通信網を活かして、情報関連企業の集積とSOHOなどの創業支援を行なってきた。特にSOHO事業者支援の活動は、全国から多くの視察者が訪れるなど、地域のまちづくりの成功事例として全国的にも注目を集めている。さらに、SOHOを始めとした情報関連企業を支援する一方で、まちづくり三鷹自身も2007年1月に「ソフトウェア開発にかかわるIT事業」としてIT事業本部を設置し、図書館システムの開発に着手した。

2009年4月には、IT事業部門が独立し、株式会社コミュニティ・クリエイション(以下、コミュニティ・クリエイション)が設立された。現在では、まちづくり三鷹が販売事業を営み、コミュニティ・クリエイションが開発・保守事業を営むという役割分担で全国に図書館システムを始めとした自治体ソリューションを展開している。

自治体業務システムをRubyで開発

2007年にまちづくり三鷹が図書館システムの開発に着手した背景には、三鷹市の教育部長であった柴田直樹氏の赴任がある。現在まちづくり三鷹の取締役である柴田氏は、三鷹市の教育部長時に大手ベンダーが提案してきた図書館システムが非常に高価であったという強い記憶を持っていた。そこで、柴田氏は、三鷹市のように人口20万人にも満たない自治体にあっても導入できる低価格で高品質な図書館システムの開発を目指した。

図書館システム開発で、着目した技術がRubyであった。以前より、フリーエンジニアからRubyで業務システムを作るのは面白いのではないか、という話があり、SOHO支援ではRubyの採用を積極的にサポートしていた。まちづくり三鷹の技術者も個人的にRubyを扱ったことがあったため、当時業務システムでRubyが活用されている公開事例はほぼ皆無な状況ではあったものの、思い切って採用をした。

まちづくり三鷹では、三鷹市で図書館業務を学んだり、司書の資格を取得したりするなど、業務理解に努めながら図書館システムの開発にあたった。並行して、全国へ営業活動を展開し、開発中の図書館システムにお客様の声を反映していった。「当初は、全国の図書館のご担当者に酷評された」とコミュニティ・クリエイション 専務取締役 営業部長 田島享氏は当時を振り返る。 しかし、ここでRubyが効力を発揮した。「オブジェクト指向でシンプルな設計ができ、プログラムの改変も容易だった」と田島氏はRubyを評価する。このRubyの特徴を活かし、厳しいお客様の声を柔軟に取り入れていった結果、2008年に長野県塩尻市に初めて採用された。2009年に稼働開始し、Rubyで開発された図書館システムが採用された事例として、当時多くのニュース記事となり、話題を呼んだ。その後、展示会やダイレクトメールなどの地道な活動により、全国の図書館での採用が進んでいる。

Rubyがオープンソースソフトウェアであることで、導入コストを低減できるだけでなく、採用が進んだ現在では「保守コストの低減にも役立っている」と田島氏は語る。Rubyは、シンプルな設計にできることや柔軟な記述ができることから、改修が容易になる。そのため「従来利用していた言語では追加費用をいただいていたような保守時の改修でも、保守業務の範囲内で対応できている」と、田島氏はRubyが顧客満足度向上に繋がっていることを強調する。また、シンプルなコーディングができることが、品質向上にも寄与している。開発当初は事例の少なかった業務分野でのRuby利用についても、実績を示すことによって問題ないことを証明してみせた。

地域に拡がるRubyの輪

2011年には”Ruby City MATSUE”として知られる島根県松江市の図書館システムにも採用され、コミュニティ・クリエイションは2012年に松江オフィスを開設した。松江市の図書館システムの保守対応はもちろんのこと、松江市内のIT企業の経営者や技術者との交流を通じて、Rubyの動向や技術情報の交換に役立てている。

コミュニティ・クリエイションでは「IT産業を通じて地域の発展に貢献したい」というビジョンを掲げており、松江市の他にも多くの地方のIT企業との連携を進めている。「地方では、メーカーの二次請、三次請というIT企業が多い。これらの企業が主体的にシステム開発や保守管理をできる枠組みをつくっていきたい。」と田島氏は語る。そのため、地方自治体の図書館システムの提案にあたっては、地場のIT企業との協業で進め、導入から保守までIT企業をコミュニティ・クリエイションがサポートしている。現在では、東京で開催するパートナー会議に20社程度が集まるまで、協業企業数は拡大している。

自治体向けに提供できるシステムも、図書館システムだけでなく、子育て支援総合サービス、施設予約管理システムへと徐々に分野を拡げている。これらのシステムも、もちろん開発言語にRubyを採用しており、「まちづくり百科」というブランド名で世に送り出されている。Rubyが自治体のIT投資額の低減と、地域IT企業の活性化をもたらし、全国各地のまちづくりに貢献している。

参考写真

●松江市立図書館TOPページ

●松江市立図書館(子供用)TOPページ

※本事例に記載の内容は2012年7月取材日時点のものであり、現在変更されている可能性があります。