株式会社クレオネットワークス

株式会社クレオネットワークス

クラウド型BPMツール「BizOne/BizPlatform」シリーズとして提供

企業サービスを支援するクラウド型BPMツール

「BPM」(Business Process Management)という言葉をご存知でしょうか。

情報部門のシステム管理業務から、営業部門のお客様訪問まで、企業の日々の活動は、わりと単純な業務が”複雑に連なっている"と考えることができます。このような"業務の連なり"を「ビジネスプロセス」または「業務プロセス」と呼び、これを設計・実行・モニタリングするのが「BPM」(Business Process Management)すなわち「ビジネスプロセス管理」です。

株式会社クレオネットワークスは、このビジネスプロセス管理を支援するクラウド型BPMツール「BizOne/BizPlatform」(ビズワン/ビズプラットフォーム)を、RubyとRuby on Rails(以下、Rails)で開発して提供しています。すでに、大手企業の情報システム部門や大手システムインテグレータのシステム運用管理、さらには大手人材派遣企業のヘルプデスク専門サービスなど、多くのお客様にご利用いただいています

(導入事例 http://smart-stage.jp/case/ss_case_bp.html)

クレオネットワークスは、設立5年目の若い会社ですが、そのルーツは、1974年に設立された独立系の情報サービス企業「株式会社クレオ」にあります。クレオは、年賀状アプリ「筆まめ」や基幹業務システム「ZeeM」、さらにはシステムインテグレーション(SI)事業などを行う5つのグループ会社を抱えるホールディングスカンパニーで、クレオネットワークスは、この株式会社クレオのグループ会社のひとつです。

クレオネットワークスは、企業サービスの品質向上を支援するビジネス基盤サービスと、印刷やデジタルサイネージ・Webなどメディア向けITサービスを提供しています。中でも、ビジネス基盤サービスの柱となっているのが、クラウド型BPMツール 「BizOne/BizPlatform」です。

クラウド型BPMツール

BPMツールの開発は、意外なところから

現在、多くの企業や組織が、ビジネスプロセス管理に注目しています。

一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は、ITユーザー企業の投資動向やIT戦略動向などを定点観測する「企業IT動向調査2013」を行っています

(http://www.juas.or.jp/servey/it13/)。

この中の「IT部門がIT投資で解決したい中期的な経営課題」では、「業務プロセスの効率化(省力化、業務コストの削減)」が1位(49.4ポイント)、「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」が2位(39.2)と上位を占めています。このほかにも、業務プロセスに関する項目は多数の票を集めており、IT部門の関心の高さがうかがえます。

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経済産業省は、2012年度に「業務最適化のための業務モデリングに関する調査研究」(http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/report/data/BPMN/summary.pdf)を行い、その成果を公表するなど、政府/自治体においてBPMに取り組み始めています。

ビジネスプロセス管理では、企業活動の骨組みとなるビジネスプロセスを体系的にとらえて、継続的に改善していきます。マネージャの単なる思い付きや感覚ではなく、業務の進捗状況の記録(ログ)に基づいてPDCAサイクルをまわしながら、業務を改善していくのです。また、そのための標準化や支援ツールの提供も進んでいます。

岩崎英俊氏

「BizOne/BizPlatform」は、このようなビジネスプロセス管理を支援するツールとして提供されていますが、「じつは、まったく違うところから開発がスタートしました。クレオのSI事業からスピンオフして作られたツールだったんです」と語るのは、クレオネットワークス 取締役でICTサービス事業部 事業部長の岩崎 英俊 氏です。

「ご存知のとおりSIビジネスは、お客様から依頼を受けてシステムを開発していくため、ビジネスが散発的になりがちです。このビジネスモデルをストック型に切り替えるなどビジネスモデルの転換をはかろうと、多くのSI企業が取り組んでいます。

私たちは、この課題の解決策として、”情報を共有するポータルを提供しよう"と考えました。深い取引のあるお客様と、システム運用状況を共有するためです」とはいえ当初は、若手の独自プロジェクトという位置付けで、日常業務の合間に開発を始めました。

「Rubyを採用した理由は、Railsやオブジェクト指向開発を試してみたいというだけのことでした。開発を始めた2005年は、Railsブームの真っただ中でした。そこで、このツールを開発しようとなったとき、Railsの解説書を一冊買って、家族で海外旅行にいったときの飛行機の中でプロトタイプを開発してみました。とはいえ、RubyもRailsも、サクサクと開発することができたので、業務の合間や休日での開発でしたが、この生産性の高さには、とても感心しました。

ツール自体のライセンス販売ではなく、SaaS型サービスを中心として提供したところ、競合のシステム運用管理ツールと比較して、コストパフォーマンスに優れていると、高い評価をいただきました。2008年からは、正式に製品として販売を開始しながら、お客様の要望に応えられるよう機能強化を進めていきました」(岩崎氏)

Ruby on Railsによる開発のメリット

浅井良氏

開発責任者であり、サービス統括部 技術開発課 上級テクニカルエキスパートの浅井 良 氏が、BizOne/BizPlatfromの開発体制について、説明してくれました。

「BizOne/BizPlatformのビジネスは、事業サイドと開発サイドに大きく分かれています。開発サイドでは、プロジェクトマネージャから開発・テスト設計・運用・デプロイまで十数名で行っています。SaaSとして提供している自社サービスで、完全なアジャイル開発ではありませんが、3か月ごとにアップデートしています。

 

使っているお客様の声や、これから使いたいというお客様の要望に応えながら、どんな機能が必要か、各機能がどのような役割を果たすべきか、事業側で決めています。ですが、それをどのように設計/実装するかは、開発サイドの裁量に任されています。仕様設計する人とコーディングする人は、あまり分離させていません」(浅井氏)

松山秀行氏

このような開発体制のメリットを、プロジェクトマネージャであり、サービス統括部 技術開発課 テクニカルスペシャリスト 松山 秀行 氏が語りました。

「このような作り方は、開発者を選ぶのですが、自分できちんと作りたい開発者にとっては、かなりうれしい体制だと思います。それに、実際に作り始めてみたら、RubyとRailsの場合、この方法でも、それほど困らないんです。  

私は、以前に別プロジェクトで、Javaや.NET Frameworkで開発していたのですが、"設計書がないと作れません"というのが、普通にまかり通っていました。表示する一文字にいたるまで、設計書に起こされているような世界です。設計書のExcel方眼紙とか、XMLの設定ファイルのメンテナンスと格闘して、それで1日が終わってしまうこともありました。

 

一方、BizOne/BizPlatformの開発では、スピード感がまったく違いました。

 

これは、2つの理由があると思います。ひとつは、事業サイドと開発チームがコンパクトなので、作りたいものや情報の共有がきちんとできていること。もうひとつは、Railsで効率よく開発するためには、その規約に合わせる必要があるので、変な方向に行きにくいというのがあると思います。規約から外れてレールに乗っていないと、開発も面倒くさいし、コードも増えて、全然早くありません。

 それに、Railsは、実サービスの運用の中で開発してきたためか、テストやマイグレーション機能が充実しており、実運用の際にも、とても役に立ちます」(松山氏)

Rubyのおかげで、安心してお客様にサービスを提供できる

「Rubyというプログラミング言語自体にも、多くの魅力がある」と浅井氏は、語ります。

「私たちの開発で役に立っているテクニックに"モンキーパッチ"があります。オリジナルのソースコードを変更することなく、プログラムの実行時にコードを拡張したり変更したりする方法のことです(モンキーパッチ:Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%81)。

 

Railsの以前のバージョンは、日本語のサポートに結構弱いところがあり、BizOne/BizPlatfromでも、メール取り込み機能で、モンキーパッチを当てて、日本語処理がちゃんと動くようにして、しのいでいました。あと、丸め処理のところでも、モンキーパッチを使っています。

 

こういったテクニックは、社内の上級開発者の1人が詳しくて、けっこうプログラミング言語のコアな部分についても調べて、いろいろなところでテクニックを発揮してくれています。

 

もしもモンキーパッチがなかったら、ベンダーがライブラリをアップデートしてくれるのを待たなければいけません。しかし、Railsがオープンソースになっているのと、Rubyから動的に拡張できるおかげで、いざというときはライブラリを自分たちでメンテナンスしてサービスをお届けすることができるので、お客様に安心してご利用いただくことができます」(浅井氏)

デプロイは、Capistranoのソースコードを読みといて自動化

「SaaSによる自社サービスを提供するということで、サービスを利用できるように配置するデプロイ(デプロイメント,deployment)は、CapistranoというRuby製ツールで自動化しています。クラウドサービスでは、何度もリリースを行います。お客様ごとに、リリースすることもあります。なので、そこは当然自動化が不可欠だろうと考えました。

でも、サービス開始当時は、あまりネット上にも情報が少なく、Capistranoのソースコードを自分で読みといて、このあたりがこうなっているんだと調べあげて、デプロイ体制を構築しました。

要望やバグ、運用状況の管理には、当初はRedmineを使っていましたが、現在はBizOne/BizPlatform上で管理しています。BizOne/BizPlatformは、ライブラリという機能を持っていて、そこを見れば運用状況までわかるようにしてあります。たとえば、バージョン情報もマルチテナント環境のサーバー稼働状況もぜんぶ紐付けてあるので、どのバージョンがどの環境にいつリリースされたとか、どういうふうにバージョンアップしていったのかが、そこを見れば把握できるのです。リリース前の新バージョンを自分たちで使うという、いわゆる"ドッグフードを食べる"という役割もあります」(浅井氏)

五嶋 剛

サービスの運用体制を取りまとめるサービス統括部 統括部長の五嶋 剛 氏は、次のように語ります。

「自社サービスを開発・運用しているため、開発チームは、突発的な障害対応の原因調査などを行う必要がでてきます。その際に、本番稼働と同じアプリのバージョン、同じデータベース構造に切り替えて、いろいろ原因を調べたり検証したりしなければなりません。そのとき、Railsのマイグレーション機能とソースコード管理ツールのGitを連携させて、すばやく開発環境を切り替えるなど、すぐに動かせるフレームワークはとても有用で、障害の原因とリカバリープランを1分でも早くお客様へ回答するために役立っています」(五嶋氏)

オープンソースの有用性

「じつをいうと、以前にオープンソースソフトウェアに触ったときは、あまり好きではありませんでした」と浅井氏は、告白する。

「Linuxとか、昔はインストールばかりしていました。設定も自分でやったり。でも、自分のやったことが正しいのか、いつまでも不安が残ります。また、何かのツールを使おうと思っても、コンパイルするだけでは動かないという場合も少なくありません。どうやったら動かせるのか、調べているうちは、とても楽しいんですけど、結局動かなければ、仕事としては結果を出したことになりません。  でも、Railsのような、最近のオープンソースソフトウェアは、あっという間に動いてしまいますし、チュートリアルも充実しています。以前に、15分でBlogを作るという動画が、ネットで公開されて有名になりましたが、これもインパクトがありました。  オープンソースソフトウェアを仕事で使うようになって、ベンダーに依存しないメリットも感じています。Javaや.NET Frameworkでも、コア部分のソースコードは読めますが、それを修正したり、独自の保守を取込んだりすることはできません。ですが、オープンソースであれば、自分たちでソースコードを読んで、必要があれば修正して、自分たちで保守していくことができます。製品やサービスを、お客様に安心してご利用いただくためには、これはとても重要です」(浅井氏)

「ビジネスで利用するときには、コミュニティの存在も不可欠です」と岩崎氏は語ります。

「継続的に開発に関わって、自分たちのビジネスに利用している人たちがいれば安心できます。私たちもいっしょに活動していくことで、エコシステムを維持・発展させていきたいと思います」(岩崎氏)

楽しく開発する環境を整えたい

「ICTつまり情報通信技術を提供する企業として、わたしたちは、これからも技術を磨いていく必要があります」と、五嶋氏は語ります。

「ひとつの目標として、RubyやRubyのようなオープンソースプロジェクトのコミッター(貢献者)と呼ばれるような人たちが、自然と育っていくような環境を整えたいと考えています。

 現在のBizOne/BizPlatform のAPIは、プロセスやライブラリを操作するローレベルのものが中心なので、今後は、もっと機能強化したり、カレンダーなどを制御したり、ほかのシステムとの連携を強化していくことで、企業システムの中心を走る"プロセスバス"といった存在になっていく可能性を秘めていると思います。  こういった機能を作りこんでいくためには、むやみに人を増やすのではなく、開発者が自分たちの技術レベルを高めながら、みんなで考え方を共有して、開発を進めていく必要があるでしょう。

 クレオには、すごい得意分野をもった生粋のエンジニアが活躍していますし、とんがった若手もいます。とんがった能力というのは、複数の領域を経験する中で、幾重にも重なりあう部分に生まれてきます。クレオネットワークスでは、このように開発者がとんがっていく機会を、もっともっと増やしていきたいと思っています。そのためにも、楽しく開発できる環境を整えたいと思っています」(五嶋氏)

ソフトウェア開発企業としてのクレオのDNA

最後に、今後の展望について、岩崎氏が語りました。

「SI事業を中心として起業したクレオですが、古くはワープロソフト『ユーカラ』であるとか、年賀状アプリ『筆まめ』というように、いくつかヒット商品を生み出してきました。最近のように、システムインテグレーション事業がビジネスモデルの転換を迫られている中で、このようなプロダクト指向を持つクレオグループのDNAが、イノベーションを引き起こしやすい環境を作り出しているのだと思います。

 

Rubyを骨格とするBizOne/BizPlatformも、日本発のプロダクトサービスとしてもっと存在感を発揮し、ご利用いただくお客様に喜んでいただければと思います。

 

最近のソフトウェアエンジニアにとっては、Webサービス企業で働くことが流行になっているようですが、技術を極める楽しさや、ビジネスを立ち上げる喜びは、どこにいても味わえると思います。Rubyによるシステム開発やコミュニティ活動を通じて、そういった想いをもっともっと共有していければと思います」(岩崎氏)

参考写真

●クレオネットワークス BizOne/BizPlatformの開発風景

開発風景

※本事例に記載の内容は2013年5月時点のものであり、現在変更されている可能性があります。