株式会社パソナテック

「はたらく」をもっと自由に。時間や場所にとらわれない自由な働き方をRubyで実現

仕事案件の仲介業は古くから存在しているビジネルモデルだが、今その仲介の場をインターネットに移し替えたクラウドソーシングと呼ばれるサービスが注目を集めている。語源となっている英語のCrowd(群衆)が意味するように依頼主はインターネットを通じて不特定多数の求職者(ワーカー)に対して仕事の依頼をできることが特徴となっている。

今回は株式会社パソナテックが運営する国内の主要クラウドソーシングサービスの1つであるJob-Hubについてパソナテックの新規事業創出を担当する粟生氏とJob-Hubのプロダクトマネージャーの鈴木氏にインタビューを行った。

クラウドソーシングが注目を集める理由

Job-Hubは2012年に開始されたサービスだが、それ以前からインターネット上では仕事仲介サービスは存在したきた。どうして今クラウドソーシングが国内で大きく注目されるに至っているのだろうか?

「2008年以降の世界的な不況から脱し、景気が上向いて来たことやスタートアップブームでウェブサービスがたくさん作られていることも追い風になっているかもしれません。しかし、一番の大きな要因は、労働力人口によるITエンジニア不足やワークライフバランスの見直しによる働き方の意識変化など日本が抱える構造的な問題に起因すると思っています。そこでクラウドソーシングのような働き方が注目されている」(粟生氏)

確かに政府もテレワーク(情報通信技術を活用した場所や時間にとらわれない新たな働き方)を積極的に推進している。今までのテレワークは社内福利厚生の一環として見なされることが多かったし、それが充分に利用されているとは言い難かったが、少子高齢化による労働人口の減少や、震災時にも企業の中心業務が停止しないビジネス設計、また地方創生の動きの一環として国や企業にその価値が見直されてきている段階にある。

Job-Hubの強みとは

クラウドソーシングは一般的に総合型と特化型に分けられる、前者については、比較的規模の小さな業務から専門的な知識が要求される大規模なソフトウェア開発まで幅広い仕事内容が提供されているのに対して後者については専門に特化している。例えばロゴのデザインなどだ。

Job-Hubは前者の総合型クラウドソーシングサービスになる。総合型の場合は専門型に比べてより多くの案件や多種多様なスキルを持ったワーカーが登録していることもあり仕事内容によってはマッチングが上手くいかなかったり、ワーカーが埋もれてしまうかもしれない。

そこでパソナテックとして培った人材紹介のノウハウをJob-Hubでも活用したJob-Hub マルチソーシングを提供している。Job-Hub マルチソーシングでは発注主とワーカーの間にパソナテックのプロジェクトマネージャーが介在しそのプロジェクトマネージャーがJob-Hubのワーカーから最適な人材をプロジェクトメンバーとしてアサインし、作業環境の準備から業務実施・管理まで、一貫したプロジェクト運営を行うという特徴がある。 対応する業務はウェブ開発からバナーやチラシ制作、ライティング、翻訳、データ加工入力など幅広い。

また、一方でワーカー側の支援として「まなび」をテーマに、国や自治体と連携したスキルアップの勉強会を開催したり、企業タイアップによる実践を通した「まなび」にも挑戦しており、Job-Hub マルチソーシングを支えるワーカー集団の形成にも力を入れている。

「依頼主が個人のワーカに発注できるというクラウドソーシングの基本的なサービスは勿論提供しています。ただ、Job-Hub マルチソーシングは人材紹介の業務も行っている当社のノウハウを活用しています。結果としてそれが他社のクラウドソーシングと差別化となっています」(粟生氏)

マルチソーシングプラットフォーム

社内業務をアウトソーシングすることは以前から存在してきたビジネスモデルであったわけだが、過去の事例を見ても無策なアウトソーシングに対しての失敗例は枚挙に暇がない。そこで、必要なアウトソーシング業務の見極めとアウトソーシング先の重要性は長らく語られてきた。Job-Hub マルチソーシングではJob-Hubに登録しているワーカーは当然のこと、その他にもLabをアウトソーシング先に含めることでアウトソーシングの最適可を実現できる。これをパソナテックではマルチソーシングプラットフォームという呼び方をしている。

パソナテックの拠点一覧を見ると日本国内に現在5つのLabが存在している。Labでは各地域の産官学と連携し現地の優秀な人材を確保しておりその人材が開発などの業務を担当する。Job-Hub マルチソーシングの依頼主やプロダクトマネージャーはワーカーやLabの人材を上手く活用しながら最適なソーシング先を探すことができる。

「マルチソーシングプラットフォームの1つとしてクラウドソーシングサービスや各拠点のLabが存在しています」(粟生氏)

Labの活動として各種の寄付講座を大学で実施したり学生に対して職業体験を行うことによって在学時から大学修了以降の職業観を養う手助けをしている。

「卒業後、地元のLabに就職して頂ければ嬉しいですし、それ以外にもJob-Hubのワーカーとして働くことも可能です」(粟生氏)


株式会社パソナテック取締役 粟生万琴(あおうまこと)氏

Ruby on Railsはやはり生産性が高かった

Job-Hubのサービスを立ち上げるにあたりRuby on Railsの生産性の高さには注目していた。新規事業ということもあり、PaaSを使いインフラ運用のコストを下げたいという思いがチームにあった。有力候補のHerokuは当時Rubyのみをサービス対象としていたことからRuby採用は必然だったかもしれないが、無数に存在するgemによって機能を一から開発しなくてよかったことはプロダクトの開発効率を高めた。

また開発中の急な仕様変更に対してはRubyの持つ動的な特性を活用した。
「オープンクラスなどRubyのメタプログラミング要素を使い他の言語では100行以上変更する必要がある場合でもRubyでは1行の書き換えで対応できることもある」(鈴木氏)


Ruby Business Users Conference 2016で講演する鈴木氏

より優れたマルチソーシングプラットフォームを目指して

マルチソーシングプラットフォームの将来的な目標を聞いたみた。

「ワーカーで作るチームの中には、グロースハックに長けた人物が多数存在するグロースハックチームのような集団が存在しています。今後はRubyのスペシャリストなど、各分野毎に高い技術力を持ったチームをより増やして行きたいと考えています」(鈴木氏)

「つい先日、セカイラボ様との資本提携を行いました。現在弊社でも中国、タイ、ベトナムにLabを構えていますが、今後は世界中のLabと連携してより優れたマルチソーシングプラットフォームを目指して活動していきたいと思います」(粟生氏)

パソナテックは1994年パソコンが家庭に進出する黎明期にWindows OSのサポートエンジニアを育成したことが事業の始まりだったがそれ以降もIT人材の育成は同社事業の中心となっている。Job-Hubのインタビューで明らかになったことは、同社の得意とするIT人材育成や仲介という特徴を活用してJob-HubやLabをマルチソーシングプラットフォームの1つとして運用することにより他社とは少し異なる概念でのクラウドソーシングを提供していることだった。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2016年2月)のものであり、現在変更されている可能性があります。