株式会社オネスト

観光名所を完全ガイド! 松江観光のお供に「縁むすびスマートナビ」!

「次回の旅行では現地の観光アプリをダウンロードしてそれをもとに観光プランを考えるのも面白いかもしれない」これは、松江をスマホで持ちあるこう!のキャッチフレーズで提供されている、「縁むすびスマートナビ」を使ってみた著者の感想だ。今までアプリで観光をしたことはないのだが、地図との連動やSNSでのシェア機能はやはり便利で、印刷物とは違った情報の見方を楽しむことができる。今現在「縁むすびスマートナビ」では、島根県松江市を対象とした観光情報を提供している。Ruby City を標榜する松江市が後援するアプリだけあってサーバーサイドの開発に使われているのは当然Rubyだ。

紙だけではなくアプリを使って観光地情報を発信

「縁むすびスマートナビ」を開発するのは、松江市に本拠地を置くソフトウェア企業である株式会社オネストである。オネストは製造業向け購買業務支援EDIシステムである自社製品「発注型Web-EDIシステム e商買」の開発販売が主力事業だが、今回は「縁むすびスマートナビ」の為に観光アプリ事業部を立ち上げた。

「松江商工会議所の中で、若者や外国人観光客にアピールすることを目的に紙以外にもウェブで積極的に情報を発信していこうという動きがありました。そこで観光に力を入れている松江市や地元の観光協会と協力してアプリ開発に着手しました」 (オネスト代表取締役石𥔎氏)

アプリを開発する際にコンセプトの1つにしたのが女性観光客だ。

「出雲大社や八重垣神社に代表されるような縁結びにご利益がある神社や、美肌で有名な玉造温泉など、この土地には女性観光客に魅力的な観光スポットが多くあります。そこで、アプリを見て欲しい対象となる顧客ニーズを反映した結果、女性的なデザインになっています」(石𥔎氏)

縁結びで有名な出雲大社は、パワースポットとして全国のメディアでもとりあげられ、ここ最近の松江、出雲地区は女性グループの観光客が多いことが特徴だ。それと同時に観光立国を目指す取り組みの成果もあり外国人観光客の増加も目立つが、「縁むすびスマートナビ」は英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、フランス語に多言語対応済みである。

(島根県のゆるキャラである、しまねっこと一緒に撮影ができるフォトフレーム機能など、アプリを楽しむことができる仕掛けが随所にある)

Ruby on Railsを使うことでクライアント開発に多くの工数を割けた

「縁むすびスマートナビ」の中でも特に面白いと感じた機能の1つとしてAR Viewerがあげられる。カメラを起動して街並みにかざすとエアタグが出現する。これはアプリに登録されている飲食店や施設のジオロケーションデータをアプリの中で読み込み、それらの情報をカメラ画像の上にお店の見える方角に表示させている。エアタグをタップすると施設の情報詳細を見ることが可能だ。不慣れな土地では地図を見るのも一苦労だが、AR(拡張現実)として見せることで直感的に操作ができる。単に調べているというよりも、ゲームのような楽しさを感じさせる機能だ。

ARというとスマートフォンの普及期に流行したことがあった。当時はスマートフォン本体の処理能力が低かったこともあり、現実的なアプリケーションとは言い難かった記憶がある。しかしながら、2016年の現在では操作も軽快に行えるものになっていた。観光アプリ事業部で主任を務める土江氏は今回の開発を以下のように説明する。

「ARも含めクライアント開発には特に力をいれました。スマートフォン向けのアプリではどこもUI/UXに力を入れており、ユーザーの操作感に対する要求は非常に高い。どれだけためになる情報を提供できていても、UIが悪ければ使われなくなってしまうはずです。Ruby on Railsを採用したことでバックエンドは最小限の人員で対応することができ、その分クライアントサイドに工数を割いて開発をおこなうことが可能になりました」

ここで、当然のようにRubyという言葉が出てきたのだが、松江市はRubyの開発者である、まつもとゆきひろ氏が在住しているということもあり、Ruby City松江プロジェクトという名称でRubyを地域のIT資源と捉え、産業育成や人材育成に取り組んでいる。このような環境が、多くの人材を惹きつけている。人材の力で競争優位性を生み出している地元企業も多い。土江氏もUターン組として松江に戻ってきて、現在担当しているのがこのアプリだ。

今後はコンテンツの制作に注力したい

今の旅行業は改めて発地、着地という観点から分析する必要がある。90年代以前の旅行では旅行者の居住地となる発地、いわゆる出発地点の業者が旅行を企画して顧客に販売するという仕組みが一般的だった。それゆえ、旅行といえば、旧所名跡であったり温泉旅館だったりと、観光地を訪れることが旅の主な目的となっていたと言える。しかしながら、インターネットの普及により着地側からの情報発信が可能になったことや、個人旅行が一般的になったことで、観光地を訪れるだけではない、その土地ならではの経験ができる体験型旅行のニーズも増加している。

今後は、体験型ニーズに応えていけるような情報の出し方が重要になってくるはずだ。

「システムとしてのアプリはある程度完成させることができたが、コンテンツについてはまた別の力を要求されます。例えば、観光コンテンツをドラマのようにプロデュースして見せていく必要があるでしょう」(石𥔎氏)

地元の人にも使って欲しい観光アプリ

発地、着地の延長線上で考えると、観光客誘致は遠くに住んでいる観光客にPRして来県してもらうというイメージを持ったのだが、どうやらそれは正しくないようだ。よく考えれば当然なのだが、観光客というのは地元であったり近隣の都市に住む人達が一番多い。だからこそ、このアプリは遠方から来る観光客のみならず地元の住人にも使って欲しい。

「縁むすびスマートナビ」には地元ユーザーと市内のお店をつなげる仕組みとしてRailsで構築されたCMS機能が盛り込まれており、担当者自らがパソコンやスマートフォンから最新情報を観光客のスマートフォンに直接通知できる機能が提供されている。この通知機能を使えば、キャンペーンなどのお得情報を配信することができ、ユーザーはPush通知されてきた情報を見ることができる。

「縁むすびスマートナビ」は今後、松江市の隣に位置する出雲市や大山のある鳥取県米子地区(松江と米子の距離は、首都圏で言えば東京と神奈川。関西だと大阪と神戸のような地理関係といえば分かりやすいだろうか)を対象に取り扱う情報エリアを拡大してアプリの運営をおこなっていく計画だ。 もしあなたがこの記事を読んだ事で旅行に興味を持ったのなら、早速目的地の観光アプリをダウンロードして欲しい。次回の旅行では観光アプリがより充実した旅を演出してくれるかもしれない。

「縁むすびスマートナビ」 http://enmusubi-smart.jp/

※本事例に記載の内容は取材日時点(2016年4月)のものであり、現在変更されている可能性があります。