Rubyコミュニティの「新人賞」Ruby Prize

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RubyPrize2014 受賞者インタビュー、2014 Prize Winner Interview
  • 柴田 博志/Hiroshi Shibata
  • Pat Shaughnessy
  • 松本 亮介/Ryosuke Matsumoto

ホスティング業界での反応

まつもと まぁそうやってmrubyがオープンソース化して、割と数ヵ月後にはmod_mrubyとngx_mrubyができたという形になりましたけれども、最初の割と早い時期の反響はどうでしたか。

松本氏 どうでしたかね。最初はまず、知っている人は知っているんですが、mruby自体もあまり知られていなかったので。
ただ、ウェブサービスに関わる人たちはすごく興味を持って見てくれていたという記憶はあります。

まつもと うんうんうん。

松本氏 ただ、mruby以上に反響があるという感じはなかったので、mrubyを公開して盛り上がった感じよりもうちょっと抑えた程度で盛り上がるぐらいの感じでした。

まつもと 今は例えばペパボさんの中でも、他のホスティング業者さんでも一部使ってらっしゃるところがあるというふうに聞きましたけれども、実際はどんな使われ方をしていて、どのようにうれしいですか。

松本氏 やはりホスティング、レンタルサーバーというのがちょっと特殊でして。まぁ特殊というかウェブサービスの方があとなんですが、どちらかというと同じサーバーに複数ホストを詰め込んで、それぞれに秩序を与えるというような使い方です。
自由の中に秩序を与えてはサーバーが落ちないように色々と制限をかけていくというスタイルの運用方法なので、それをイメージして、そういうニーズに合わせて使えるように実装しました。
皆さんそのとおりに、一人のユーザーに対してどういう制御をするとか、同時接続するとか、色々と使ってくださっているようです。
あとは負荷が上がったらメンテナンス画面を出すとか、今はそういった厳しく制限する方向での使い方が多いと思います。
まぁ具体的に見せてもらってはいないので、実際どう使っていらっしゃるのかというのははっきりとは分からないんですが、そういう動的に制限をする使い方が多いようです。

まつもと それはmod_mruby、ngx_mrubyの機能と、それから、これは松本さんご自身が開発されたmruby-cgroupでしたっけ?

松本氏 はい。

まつもと mrubyからcgroup、Linuxのリソース制御の機能をアクセスする部分を組み合わせてそういうのを実現しているということですよね。

松本氏 はい。あとngx_mrubyはnginxというのがあって、どちらかというとプロキシの振り分けをngx_mrubyで動的に振り分けるというような、色々な情報とかRedisとか、外部のデータストアから情報を拾って振り分けるという使い方がngx_mrubyの場合は多いようです。mod_mrubyはやはりApacheなので、制限をする使われ方です。

まつもと 使われ方の局面がnginxはフロントでリバースプッシュみたいな使い方をすることが多いのに対して、Apacheはアプリケーションサーバになることが多い。

松本氏 もう全部詰めみたいな。

まつもと はいはい。その役割の違いによって使われ方も違ってくると。

松本氏 はい、そうですね。

まつもと じゃあそのホスティング業界には結構革新的なテクノロジーをつくり上げたことになってませんか。

松本氏 そうですね。そう言っていただける。例えば福岡の@udzura(GMOペパボ株式会社福岡支社の近藤 宇智朗氏)さんとか。まぁ、色々ホスティングに関わっている人たちにそう言っていただけています。

まつもと じゃあ、春からは彼らと一緒にさらにそのテクノロジーを邁進させると。

松本氏 そうですね。運用に乗せて、今後どんどん改善していきたいと思っています。
今は運用に乗せて、色々改善とかバグとかを直しながら安定させるというフェーズに入ってきたかなというのが、ここ半年の感じですね。

まつもと じゃあ春からはさらに新しいフェーズで活躍を期待できるということですね。

松本氏 機能も今は本当にシンプルで最低限の機能しか実装してません。まぁそれは敢えてそうしていて、Rubyで拡張できるから性能がすごく遅いみたいなことを言われたりするのはちょっとよろしくないので、できるだけ性能は落とさずにシンプルな作りにしておいて、本当に最低限の機能にしてるというのが今の状態です。
4月からはその辺りのバランスももうちょっとうまく取っていけたらなと思ってます。

まつもと はい、ありがとうございます。では、今回の賞金も子育ての足しにしていただければと思います(笑)。

松本氏 はい。

まつもと ありがとうございました。