Rubyコミュニティの「新人賞」Ruby Prize

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RubyPrize2014 受賞者インタビュー、2014 Prize Winner Interview
  • 柴田 博志/Hiroshi Shibata
  • Pat Shaughnessy
  • 松本 亮介/Ryosuke Matsumoto

コンピュータサイエンスにも理解を深めてほしい

まつもと 本の中で一番印象深い章はどの章ですか。あるいはどんなトピックに一番強い印象を持っていますか。

Pat氏 自分で一番おもしろいと思ったところは、RubyがLispからどんなアイデアを借り受けてきたかというパートですね。そういうのもまつもとさんご自身、もう何回もお話しになったと思うんですけれど。
またそれ以外にも、私がRubyを好きな理由としては、ブロックを使うことができるということです。メソッド呼び出しの後にブロックを添えることができる。そこがこの言語の美しいところだと思います。ユニークですよね。
言語のデザインのやり方、それがとても美しいと思いました。
ブロックを渡すということはアイデアとしては比較的思いつくと思うのですが、実際にそこから実装するというところが一番難しいと思います。
Rubyが書かれたCのコードを読んで、それをどうやってなさったのかを調べたところが面白かったですね。

まつもと 読者からのレスポンスはありましたか。

Pat氏 えぇ、みんな気に入ってくれてるようです。全員ではないと思いますし、この本はRubyのビギナーに対する本ではないですね。Rubyを初めて勉強する人にとってはいい教科書ではないかもしれません。それよりも、既にRubyのことを知っていて、その使い方も分かっている人たち向けです。次のレベルに行くために読む本でしょう。
皆さんに何をお伝えしたいか、この本を読んでどこを分かっていただきたいかということ、Rubyがどのように動くのか、それを、まつもとさんがどうやって作ったのかということです。
それから、その背景にあるコンピューターサイエンスにも理解を深めてほしいと思っています。
Rubyを学んで使っている人の多くというのはコンピュータを研究する科学者とかエンジニアではなく、コンピューターサイエンスを大学で専攻したわけではない人も多いと思います。まつもとさんのおかげで、より多くの人たちにプログラミングができるような環境が生まれたと言うこともできますね。
実は、私自身も、コンピューターサイエンティストではないんです。大学では物理学を専攻したので。だから、みんながコンピューターサイエンスについてRubyで学んでほしいですね。Hashがどうやって動くのかとかクロージャはどうなんだとか、そうした言語の中身について学んでください。そこをみなさんに知ってもらうことが非常に重要なことなんだと思っています。