Ruby Business Users Conference 2016 開催報告

rbuc_1

2016年2月23日、東京渋谷にてRuby Business Users Conference 2016を開催致しました。

今回、前年に引き続き「Rubyをビジネスに活用するユーザーが集うイベント」の第二回というかたちで、Rubyのさまざまなビジネス活用の取り組みに関する講演、またビジネス交流の場として、講演からアフターパーティーまでたくさんの方々にご参加いただきました。ありがとうございました。

基調講演  まつもとゆきひろ

matz1

matz2 matz3

新しいことにチェレンジする人たちへ

さまざまな用途への活用も増え、今でこそプログラミング言語のなかで「Ruby」の名はすでに多くの方々に知られるところとなり、これまでの過程は順風満帆であったようにも見えるかもしれませんが、まつもとゆきひろ氏は1993年にRubyの開発を始めてから「何度も心が折れそうになった」と話します。作者自身は「きっとこれはいい!」と思って作っても、実際にはメモリーやCPUパワーが足らなかったりして使い物にならない… ところがそれらの外部条件が満たされたタイミングで作り始めるのでは“間に合わない”ということもあるわけです。まだまだ一般的には条件が整わないと言われているうちに新しいことに取り組んできたからこそ、Rubyは幸い然るべきタイミングで世に出ることができたわけですが、それでも「Perlがあるからいらない」と言われたり「実行速度が遅い」と言われたり、さまざまな声を聞くなかで「何度も心が折れそうになった」と言います。現在もmrubyの取り組みなどで新しい試みを続けるまつもと氏ですが、このようなRuby開発を通した実体験を踏まえ、新しいことにチャレンジする人たちに向けて次のようなメッセージを送ります。

 「みなさんがこれから何か本当に新しいソフトウェア、サービスを作るときに、だいたいの場合は『そんなものいらない』と言われる。ところが100人中100人が『これはいい』と言ってくれるものというのはきっと他の誰かもすでに思いついている、だから“間に合わない”。少なくとも半分以上の人が『それはいらない』『使いものにならない』と言うもののほうが未来がある。だからみなさんが何か新しいことにチャレンジするとき、そしてその過程で心が折れそうになったときには、『あぁ、まつもとも心が折れそうになったって言ってたなぁ』と思って耐え忍んでいただいて、未来を切り拓いていただければいいなと思います」

ゲスト講演  ** 林曉甫(NPO法人inVisible マネージング・ディレクター、鳥取藝住祭総合ディレクター)   「invisible to visible(見えないものを可視化する)」**

hayashi_sama1

hayashi_sama2 hayashi_sama3

CREATIVITY = CAPITAL

林曉甫さまにはゲスト講演として、Rubyの枠組みを超えたテーマでの講演を行っていただきました。アートプロジェクトという取組みによってどのような価値や可能性がつくりだされるのか、そしてそこに関わった人にどのような変化が生まれうるのか。普段は見たことがない風景をみることこそ、新たな興味や可能性への気付きであり、人と人がつながるコミュニティの可能性であり、そして新たなビジネスの可能性であるという考えをもとに、さまざまなアートプロジェクトの事例を紹介していただきました。ITテクノロジーとアート、創造性について考える良い機会となりました。

スライドを見る

講演  ** 鈴木真志( **株式会社パソナテック)   「新しい働き方―東京+サテライトオフィスの開発手法」

suzuki_sama

Rubyのエコシステムをフル活用した開発環境

クラウドソーシングサービス「Job-Hub」の開発において実践しておられる、東京オフィスと佐賀県のサテライトオフィスを経由したRuby on Railsを用いた新しいリモートワーク開発についてお話いただきました。労務管理、コミュニケーション、セキュリティのそれぞれの課題について、Rubyのエコシステム(RedmineやCircleCI,Heroku)を活用することでいかに対応することができたのか、また鈴木さま自身のライフスタイルの変化など具体例を交えた非常に興味深いお話でした。

講演  ** 吉田裕美(有限会社 EY-Office)   「即戦力になるRubyエンジニアの作り方教えます」**

yoshida_sama

Rubyエンジニアを企業内で育てる

数々のスタートアップ企業を支える技術として選ばれているRubyやRuby on Railsですが、Rubyを使いこなせるエンジニアの不足がさけばれています。吉田裕美さまには、短い時間で実際の仕事に入っていけるRubyエンジニアを育てる最初のステップについての具体的なトピックを、いろいろな会社でのRuby教育の経験をもとにお話いただきました。今回のご講演は、RubyWorld Conference 2013, Ruby Business Users Conference 2015 でご講演された「Rubyエンジニアを企業内で育てる」シリーズの最新作とのことで、より具体的な内容を盛り込んだとても参考になるお話でした。

講演  ** 川西智也( **エネチェンジ株式会社)   「情シス コミュニティ スタートアップ」

kawanishi_sama

一人ひとりがより幸せを感じられる開発のためのヒント

電力自由化が進むなかでますますニーズが増えている電力比較サイト「エネチェンジ」、川西さまは現在チーフエンジニアとして開発に関わっておられますが、開発の現場をより良くしていくための心がけや取組みについて、ユーザ企業のIT部門、Rubyコミュニティ、スタートアップでのご自身の経験を踏まえお話いただきました。それぞれの環境の違い、人が動く理由などについて説明するとともに、一人一人の人間がより幸せを感じるためにどうしていくといいのかを、非常にたのしそうにお話されているのが印象的でした。

スライドを見る

講演  ** 黒瀧悠太( **GMOペパボ株式会社)   「新規事業の成長を支えるRuby」

kurotaki_sama

変化に対応しながら成長していく仕組み

少人数のチーム且つ短期間で作り上げたサービス「PEPABO WiMAX」、開発者の黒瀧さまには開発チームにおけるRubyとRuby on Railsの活用例についてお話いただきました。リリースから1年経過した現在もRubyの生産性を活かし、様々なビジネス要件の変化に対応することができているそうで、また職種の領域を横断して変化に対応出来るチームづくりなど、変化の早い世界でいかに対応し前に進んできたのかをお話いただきました。

スライドを見る

講演  ** 須山理未( **Bulb株式会社)   「札幌発のスタートアップが、多様なメンバーで、リモートワークを中心としたチームを作り、幸せな開発をする為にRubyを選択してみて」

suyama_sama

多様なメンバーをつなげるRuby

札幌のスタートアップBulbでは、多様なメンバーがリモートワークを基本としたチームを構成し、経験・スキルレベル・生活スタイル・住む場所・得意分野を超えて効率のいい開発をするために、これまでにRubyを用いた様々な工夫を行ってきたそうです。多様なメンバーを効果的に繋ぎ、スピード感のある開発を可能にするために行った選択や検討のポイントに関して、様々な工夫・試行錯誤した事例をご紹介いただきました。