株式会社ウィルウェイ

社内リーンスタートアップ<プロジェクトをRubyで推進

株式会社ウィルウェイ(以下、ウィルウェイ)は株式会社シンカが提供する人と組織の適性検査システムであるtanθ(タンジェント)をRuby on Railsを使い再開発した。tanθ の成功をきっかけにして、今後は同社で展開する自社サービスのいくつかに関してクライアントサーバーベースからクラウドベースへの移行を計画している。

人材採用の適性検査をより利用しやすく

就職採用試験時にCBT(Computer based testing)での性格検査を受検したことはないだろうか。10分から15分ほどの時間でweb上に用意された多肢選択式の検査で設問に回答をしていくだけで受検者の性格的特性が導き出される。

検査は自宅のパソコンからできるので気軽に落ち着いて回答できる。性格検査は自己分析とも呼ばれていて筆者も就職活動の初期段階で受検し、その結果を応募企業を考える際の資料として活用した経験がある。

適性検査は受検者にとっての自己分析のみならず、企業にとっては採用活動に使える重要なデータともなる。特に昨今の就職活動では応募者はインターネットで気軽に応募できることもあり、採用側の負担は大きい。もちろん性格検査の結果は採用プロセスの一要素にすぎないが、応募者の適性を判断する際の参考情報の1つになるだろう。その結果自社に適応できそうな人材の採用につながり採用コストの低減を期待することができる。

より広く使ってもらう為にサービスを分離

tanθ のサービスは本来、e-Fit(イーフィット)と呼ばれる応募者管理システムの1サービスとして提供されていた。それゆえに、独自の応募採用サイトと紐付いた形でしかtanθ を使うことができず、商品の販売に対しての自由度が低いという営業現場の声があった。これを解決する為に、tanθ 単独のサービスとして提供することになった。

新しいtanθ では、各社の採用サイトと受検者情報を連携し、tanθ の受検結果を連携先サイトに返すことができるようになった。それによって、メジャーな就職活動サイトで採用活動を行う企業でも利用できるようになり商圏が大きく広がった。

短期間の構築に役立ったのはRuby

tanθ がメインターゲットとしている新卒採用のスケジュールに関して、色々と試行錯誤が続いている状態だが、新卒採用は季節商品の側面がある。そのため、プロジェクトの発足時から運用開始前での期間が限定されており、比較的短期間での開発が要求された。当初はJavaでの開発という声もあったが、Webシステムを構築する際のエコシステムがRubyを採用する決め手となった。

「今回のシステムに関して言えば、開発から構築、運用という一連の流れがJavaよりもスムーズに行きそうだという確証がありました。特にApache HTTP Server + Phusion Passengerを利用した本番環境構築がJavaに比べて工数が少なく済み、開発期間の短縮にも寄与しました」(ウィルウェイ 岩政氏)

人材確保の観点からも以下のように評価する。

「当社はRuby人材を抱えていたわけではありません。現在の市況では中途採用も難しく、社内の技術者に覚えてもらう必要がありました。ただ、自分自身がRubyを学びいくつかの社内用システムを構築した経験から、他言語からの習得コストについてはそれ程高くないはずだという実感がありました」(岩政氏)

委託元である株式会社シンカの反応

tanθ は採用コンサルティング会社である株式会社シンカの商品であり、開発はウィルウェイが担当している。シンカは今回のプロジェクトに対して高い評価を与えている。

「過去に外注した際、仕様とは違うものを納品され困ったことがあった。開発工程も明らかにしてもらえずそこに強い不満を持った覚えがある。今回は開発プロセスも含めて可視化してやってくれるパートナーが欲しかったが、プロジェクトの早い段階から実際に動くシステムを見ながら進捗を確認することができたし、それが安心につながった」(シンカ 田中氏)

tanθ は現行のサービスが存在していたため、まず画面だけを現行システムを参考にして先につくってしまった。それに対する評価について修正を加えながら本番環境に適用していく、プロトタイピングに似た手法を活用して開発を行った。

今後のクラウド化を見据えて

ウィルウェイでは今回の開発手法を社内におけるリーンスタートアップに活用したいと考えている。

「現在提供しているパッケージ製品のいくつかに関して今後はクラウドベースのサービスとすることを考えています。tanθ での成功手法を他のパッケージ製品にも展開していきたい」(岩政氏)

直近で予定しているのは大手企業にも導入実績がある健康管理システムのリプレイスだ。現在は社内ネットワーク内のみを対象としているため、従業員の離職や配置換えに伴う企業移動をした際のデーターの紐付けが困難になっており健康管理データを継続して活用することに難しさがある。クラウド化により個人にデータを紐づけることが可能になり、データを企業間でも持ち運べるようになる。そうすることによって健康状態の追跡管理がより容易に行える。

ウィルウェイでは、今後、Rubyのエコシステムを強力に活用したWebシステムの開発により力を入れていく予定だ。

「tanθ の開発ではRSpec、Capistrano、Gitなどの技術が非常に効率性を高めることに寄与しました。Rubyのエコシスムをフル活用するための社内プロジェクトチームが立ち上がっており、今後はそのノウハウを活用していきたい」(岩政氏)

※本事例に記載の内容は取材日時点(2016年2月)のものであり、現在変更されている可能性があります。