アドソル日進株式会社

小松電機産業株式会社

分散拠点間のプロジェクト運営をRubyで一元管理

プロジェクト管理の質の向上へ

アドソル日進株式会社(以下、アドソル日進)は独立系のシステム開発企業として、企業や公共向け情報システム及び組込みシステムに特化したソリューションを提供している。2006年にRubyに取り組み始めて以降、徐々にRubyの適用分野を拡げてきた。その適用分野の拡大の大きな起点となったのが、「多機能分散開発プラットフォーム」の開発であった。

アドソル日進では、多くの開発プロジェクトを行なってきていたが、そのプロジェクト管理の手法や利用されるツールは、プロジェクト毎に異なるものであった。そのため、プロジェクトで得られる経験知や資産が共有できないでいた。また、プロジェクトの実態を把握するための手法も確立されておらず、その手法はプロジェクトに依存している傾向があった。

そこで、アドソル日進では、プロジェクトの資産を共有するとともに、その進捗なども可視化する仕組みを構築しようと考えた。この仕組みを構築することで、会社全体としてプロジェクト管理の質の向上を目指したのである。この仕組みこそが「多機能分散開発プラットフォーム」であった。

「多機能分散開発プラットフォーム」の開発

プロジェクトの進捗管理や資産の共有を図る上で、既存のプロジェクト管理ツールをベースに仕組みづくりすることを考えた。このベースとなるツールとして選定されたのがRuby on Rails製のオープンソースプロジェクト管理ツールの「Redmine」であった。この仕組みづくりを始めようとした2007年当時で既に「Redmine」は日本国内での利用事例が多く、人気の高いツールであった上、無償で提供されていることや、ソースコード管理システムとの連携も容易であったことが、選定の大きな要因であった。

また、アドソル日進では、2006年からRubyの活用を開始しており、注目していた技術であったことも「Redmine」の選定に大きな影響を与えた。「Rubyは、その生産性から主流になりうる技術と考えていた。」とアドソル日進 特別技術顧問 野口好博氏は当時を振り返る。実際に、その生産性を享受しながら、「多機能分散開発プラットフォーム」を開発していった。

「Redmine標準では足りない機能や、プロジェクトの現場から要望がある機能を、Rubyのおかげで短期で開発することができている。」と先端IT技術センタ センタ長 佐藤 一裕氏は、Rubyの生産性を高く評価する。ソースコード管理システム(「Git」や「Subversion」)との連携といった「Redmine」の標準機能を利用するのはもちろんのこと、プロジェクトの運営に必要な機能は追加開発している。例えば、アドソル日進ではオフショア開発を活用しているが、そのオフショアとの分散開発に必要なテレビ会議の機能を開発したり、プロジェクト状態を視覚的に表すためのチャートの機能を開発したりと、付加価値の高いプロジェクト管理ツールへと成長させてきている。さらに、「スプレッドシートとの連携でJavaライブラリである「POI」を活用するなど、既存Java技術も柔軟に活用できている。」と佐藤氏は語る。社内のプロジェクト現場の要望を柔軟に取り入れてきた結果、社内で200を超えるプロジェクトにおいて利用されてきた。プロジェクトで得られる資産の共有や進捗の可視化などを実現できてきたことで、当初目指していた全社規模でのプロジェクト管理の質の底上げへ効果が出てきている。

また、Rubyを全面的に採用したことで社内でのRubyの評価が高まり、東京・大阪・福岡の各拠点で「Ruby技術者養成研修」を実施するなど、Ruby技術者の増大およびRuby適用業務の拡大にも繋がっている。

ソフトウェア開発以外の現場にも

社内業務効率化のために開発した「多機能分散開発プラットフォーム」であったが、『AdsolDP』(Adsol Development Platformの頭文字から付けられた)という名前で社外へのサービス提供も始めた。クラウド環境であるAmazon EC2を活用し、SaaSとして提供を開始している。また、アドソル日進には難関資格であるPMP(Project Management Professional)資格取得者が70名以上もおり、その高いプロジェクト管理能力を有したコンサルタントによるコンサルテーションも付加サービスとして提供している。

『AdsolDP』 で利用されている「Redmine」は、チケットと呼ばれる単位で”課題”を管理することのできるツールである。この課題を管理するという考え方および業務フローは、ソフトウェア開発以外でも適用が拡がってきている。「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)をしている会社など、海外とのやり取りが多い現場でもご利用いただける。」と佐藤氏は語る。国境を超えたビジネスが加速する現代において、Rubyで開発されたプロジェクト管理ツールの活躍に今後も目が離せない。

システム概要

※本事例に記載の内容は2012年2月取材日時点のものであり、現在変更されている可能性があります。