国立大学法人島根大学

国立大学法人島根大学

Ruby、Ruby on Railsで新たな講義を開講

地域と人の特色を活かして

国立大学法人島根大学(以下、島根大学)は、大学憲章に「知と文化の拠点として培った伝統と精神を重んじ、『地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学』を目指すとともに、学生・教職員の協同のもと、学生が育ち、学生とともに育つ大学づくりを推進する。」と謳い、その実現のために、地域社会との積極的な関わりを大切にしている。

その一環として、島根大学では「総合科目」を設けている。総合科目は、地域社会の各方面で優れた知識及び経験を有する人を非常勤講師として迎え、地域との連携を強化した科目となっている。受講生も学部による制限を設けず、一定の履修をした後に広い視野から各専攻を位置付けることができるようになることを目指している。

総合科目には、地元の酒蔵へ実習に出向く「酒-一杯の酒から覗く学問の世界」や斐伊川(島根県東部にある一級河川)周辺の歴史ある場所を順見する「フィールドで学ぶ「斐伊川百科」」など、地域資源を活かした様々な講義が並ぶ。

地域資源としてのRuby

島根大学が立地する島根県松江市では、2006年に松江市がRuby City MATSUEプロジェクトを発足、島根県も情報産業に力を入れるなど、行政機関、民間企業、教育機関が連携しながら、Rubyを軸とした地域活性化を進めている。島根大学もこの地域活性化の取り組みに積極的に参加し、この連携の中で築かれていった人脈や自治体の支援体制を活かし、情報経済論を専門分野とする法文学部の教授であり、総合情報処理センターのセンター長を務めるの野田哲夫教授によって、2007年に「Rubyプログラミング講座」が開講された。

e限られた期間を有効に

「Rubyプログラミング講座」は全15回と、プログラミング言語を習得するには十分な時間とは言えない。履修した学生の習得度を高め、さらに開発への興味を持つきっかけとなる講義内容にするためには、この短い講義期間中に実際に稼動するWebアプリケーションの開発までを経験することが重要と島根大学では考えた。そこで、RubyとRuby on Railsの開発効率の良さによって、このWebアプリケーション開発のカリキュラムへの取り込みを実現させた。

学生が履修する要件として、「何らかの言語でのプログラミング経験があること」としているが、開発の経験が少ない学生が、限られた期間の中でWebアプリケーションの開発まで経験することは容易ではない。しかし、Rubyは他のプログラミング言語に比べて記述量が少なく、文法が分かりやすいため、言語を効率的に習得していくことができる。さらにRuby on Railsを活用することで、Webアプリケーション開発の一連の流れを効率よく体感することができる。さらに、Ruby on Railsには簡易版のWebサーバーとデータベース管理システムが用意されているため、手早くプログラムの動作を確認でき、学生のモチベーションを継続していく上でも有効だった。

一方、講義を受け持つ教員のメリットも大きい。複数の講義を抱える教員にとって、事前準備の手間、時間の制約、運営にかかるコストなどを考えると、新たな講義を一つ追加することは容易なことではない。しかし、Rubyはオープンソース・ソフトウェアであり、導入やバージョンアップを柔軟かつ低コストで行うことができるため、事前の準備作業の負担が少なくて済み、この講座を円滑に実施することができた。

このメリットを活かし、2011年度からはRuby on Railsを利用した開発を教えることができる高清水氏を講師に招き「開発フレームワーク」を新たな講義として立ち上げた。これは「Rubyプログラミング講座」を受講した学生が、さらに一歩踏み込んだ学習をすることができるようRuby on RailsによるWebアプリケーション開発を中心としたカリキュラムになっている。この二つの講義を提供することで、履修した学生が継続的に学べる環境も提供できるようになった。

Rubyの求心力

総合科目では、単にプログラミング知識や技術の習得だけではなく、地域社会の各方面で優れた知識及び経験を有する人を非常勤講師として迎えることも求められている。「Rubyをテーマにしたことで、多くの方の賛同と協力を得られた」と野田教授は語る。2007年の開講以来、毎年外部からの講師を招き、多い年で7~8名が講壇に立つ。講壇に立つ講師の顔ぶれは、第一線で活躍する技術者が並ぶ。実社会での経験を織り交ぜながら進められる講義は、魅力ある内容となっており、学生たちのモチベーションを向上させることができている。こういった講師陣を集めることができた背景には、地域の中でRubyを中心に産学官が連携した取り組みを続け、相互協力の体制を築けてきたことが大きい。

地域の中で、企業、自治体、団体などによって様々なRubyのセミナーや勉強会が開催されており、履修が終わった学生がRubyやRuby on Railsの理解をさらに深めようと、自主的にセミナーや勉強会を受講したという報告もある。

これらのことは、地域資源を活かした島根大学の大きなアドバンテージと言える。将来的には、「Rubyを勉強するには、島根大学と言われるようにしたいですね」と野田教授は語る。

より未来につながる講座へ

現在は、指導できる講師が限られる、学生をサポートするティーチングアシスタントがいない、他のカリキュラムとの調整が必要、といった課題があり「Rubyプログラミング講座」と「開発フレームワーク」の2つの講座は、隔年での開講となっている。履修した学生の教育効果を高めるためには、2つの講座を同一年で続けて受講できることが望ましいため、今後、講座を履修した学生がアシスタントとして後輩の指導にあたるなど、多くの人が関わることができるような仕組みづくりが求められている。この仕組みづくりも進み、年間を通して「Ruby」を学ぶことができる講座となっていけば、受講生がこの講座を通じて得た知識や経験を活かしRubyの技術者として活躍し、今度は講師として教壇に立つ、そんな姿を見られる日がやってくることだろう。

講義の紹介

●講義の様子

講義の様子1  講義の様子1 

●Rubyプログラミング講座:2009年度プロモーションビデオ

プロモーションビデオへ

※本事例に記載の内容は2012年2月取材日時点のものであり、 現在変更されている可能性があります。