イズミヤ株式会社
クラブカード会員向けモバイルサービスをRubyで開発
サービス充実による顧客満足度の向上
イズミヤ株式会社(以下、イズミヤ)は、本部のある大阪府を中心に関東、近畿、中国、九州地方で90店舗近くの総合小売業のチェーンストアを展開している。イズミヤではスーパーマーケット業態の店舗名称をデイリー“カナート”と呼ぶ。“カナート”はアラビア語源で「オアシス」を意味し、毎日(デイリー)の暮らしに必要な品々を豊富に取り揃えて、お客様をお迎えする「オアシス」のような「地域に密着した生活便利店」でありたいという願いがこめられている。この願いを実現すべく、イズミヤでは、それぞれの地域の顧客に向けて、日々、サービスの提供を続けている。そういった中、イズミヤは顧客に向けてさらなるサービスの拡充を図りたいと考え、独自会員であるクラブカード会員への新たなサービスの展開を図った。
そこで、イズミヤはより多くの顧客が利用できるモバイル端末を利用した会員向けサービスの導入を検討し、プロモーション、マーケティングなどeビジネスに特化したビジネス支援を行っている伊藤忠インタラクティブ株式会社(以下、伊藤忠インタラクティブ)と共にサービスを構築することにした。
効果的な会員向けサービスを短期間で、効率良く開発するために
伊藤忠インタラクティブはイズミヤが求める会員サービスの実現には、モバイル端末の特性を活かしたタイムリーな情報提供に加え、ポイント特典など顧客にとって分かりやすくかつ魅力的な独自サービスを提供する必要があると考えていた。そこで、限られている開発期間の中で高性能かつ魅力的なサービスの構築を実現するために、アプリケーション内容にあわせて構築するシステムを振り分け、開発作業を分担することで効率的かつ円滑な開発を目指した。
情報発信サービスについては、使いやすさも考慮し、イズミヤのサイト管理者が以前から使用していたオープンソースCMSの「WordPress」を選択した。一方、ポイント特典など、会員情報やポイント残数など既存の会員管理システムとの連携が必要となる独自サービスの構築には、高性能なシステムを短期間で開発することが求められた。そこで、伊藤忠インタラクティブにおいて以前から高い生産性を評価していた「Ruby」で開発することを検討した。開発にあたっては、共同開発の経験もあり、Ruby on Railsでの開発実績も豊かな株式会社万葉(以下、万葉)と協働(分担)でのシステム構築を提案し、イズミヤからの承認を得ることができ、開発へと進んだ。
高い性能を求められるシステムを短納期で開発
今回のモバイルサービスの中で顧客が「くじびきゲーム」や「アンケート」を利用するとクラブカードポイントが加算されるというアプリケーションを提供した。このアプリケーションの実現には顧客の会員情報はもちろん、現在のクラブカードポイント残数など、既存会員管理システムのデータベースと連携する必要がある。さらに、顧客の満足を得るためには、操作後すぐにポイント加算が反映されるようにリアルタイムでの連動も求められる。こういった複雑な処理を実行する高性能なシステムを短期間で開発することが求められる状況において「Ruby on Railsでの開発が非常に有効だった」と万葉の代表取締役大場寧子氏は語る。
有効性は、Ruby on Railsの高い生産性によるものだけではなかったようだ。まず、独自技術を採用しているため開発に手間がかかるフィーチャーフォンへの対応には、特化したプラグインであるjpmobileを活用することで作業が軽減し、効率的な開発ができた。また、より安定したサービスを提供していくために、Ruby製テストツールのRSpecによりテストを自動化することで、もれのない徹底したテストを実施した。「RSpecにより品質を確保することができた」と大場氏 はRSpecの有用性を強調する。さらに、Ruby on Railsで生成されたWebアプリケーションに高いセキュリティが確保されていることも大きなポイントとなった。Ruby on Railsで生成されたWebアプリケーションはSQLインジェクション対策など基本的なセキュリティが確保されており、作業が少なくて済むことも効率的な開発につながったと言える。このようにRuby on Railsと付帯するプラグイン、ツールを活用することで、高性能、高品質のサービス開発を短納期で実現したのだった。
イズミヤのさらなる成長を支えるサービスの開始
今回開発したクラブカード会員向けモバイルサービスは2011年7月に「ええモバイル」の名称で運用を開始した。「ええモバイル」ではメールマガジンなどの情報発信に加え、アンケートに答えるとポイントが加算されたり、おみくじを引いて結果に応じたポイントが加算されたりと、リアルタイムに会員限定の特典を受けられるサービスが満載である。さらに会員は買い物をする際にレジでクラブカードを提示するだけで、自動的に「ええモバイル」会員限定の特別価格や割引価格で購入できる。これは「ええモバイル」会員の情報とクラブカード情報が連動しているために実現できている機能である。イズミヤでは、この高性能かつ多機能なモバイルシステム「ええモバイル」により、イズミヤの顧客は手軽に情報を受信できるだけでなく、リアルタイムに有益なサービスを享受できるのである。今後、「ええモバイル」によって、既存会員の満足度向上だけでなく新規会員の獲得につながることが期待される。地域のお客様に愛され続けるイズミヤのさらなる成長を、Rubyが陰ながら支えている。
画面イメージ
イズミヤ株式会社 「ええモバイル」の紹介ページ
※本事例に記載の内容は2012年3月取材日時点のものであり、 現在変更されている可能性があります。
事例概要
- 会社名
- イズミヤ株式会社
- 活用分野
- 会員向けモバイルサービス
- 利用技術
- Ruby on Rails
- RSpec
- jpmobile
- 開発会社
- 伊藤忠インタラクティブ株式会社
株式会社万葉
- ニーズおよび解決したかったこと
【イズミヤが求めたこと】
- クラブカード会員向けサービスの充実による既存顧客の満足度向上
- 同サービスの充実によるクラブカード会員への新規入会者の獲得
【伊藤忠インタラクティブが求めたこと】
- より多くの顧客が利用できるよう、モバイル端末を活用した効果的かつタイムリーな販促サービスの提供
- 既存会員管理システムとのリアルタイムでの連動(会員情報/ポイント情報など)
- 運営者の効率的な更新作業の実現
- Ruby採用理由
- 高い性能とセキュリティが要求される独自システムをRuby on Railsで短期間に、効率良く開発できる
- RSpecにより自動テストを効率的・効果的に行える
- jpmobileにより、効率的にフィーチャーフォン特有の機能に対応できる
- Ruby採用効果
- 会員情報・ポイント情報との連携などバックエンドでの複雑な処理を要求されるシステムを短期間で、効率良く構築できた
- テストの自動化により、もれのない多面的なテストの実施ができ、高い品質のシステムがリリースできた
- 手間がかかることが多いフィーチャーフォン向けのサービス構築をプラグインの活用で効率良く開発できた