ラグル株式会社

販売から2年間で導入サイト数300に達したWebメディアサイト構築CMS

オウンドメディアの定着

Webメディアサイトは別名オウンドメディアという名称で知られており、オウンドメディアは広義で、自社Webサイト、キュレーションやニュース記事を中心としたブログ、また企業が運営するSNSなど、文字通り自社が保有するWeb系メディアを意味する。ただし、狭義では企業自身が運営するブログのことを指す事が多いようだ。以下、オウンドメディアは狭義の意味で使用している。

オウンドメディアはここ数年でもっとも注目を浴びている情報発信方法の1つで、一時的な流行というよりは新たな広告や広報活動を担うツールとして定着した感がある。

オウンドメディアをより深く理解するために企業におけるWebメディア活用の歴史を少し振り返ってみよう。旧来、企業のWeb戦略といえば、広告出稿や検索エンジン経由で自社サイトに訪問してもらうことが一般的だった。しかし、その後SNSの出現でその流れが大きく変わる。企業と個人は直接つながることができるようになり、有益な情報は個人間で広く共有されるようになった。企業は個人とつながる為に、様々な種類の情報を自社で提供しようとしている。

WordPressではなくRubyを利用したCMS Clipkit

ラグル株式会社の提供するWebメディアサイト構築CMSであるClipkit(クリップキット)はRubyで構築されている。CMSといえば一般的にはWordPressを思いつくが、Clipkitはオウンドメディアに特化しており、メディア運営者の細かなニーズに対応した作りがウリとなっている。

「WordPressは汎用的なプロダクトですが、オウンドメディア運営に最適なCMSというわけではないのです。例えばライター様にとって記事入稿の際にHTMLやCSSの知識が必要となればものすごく投稿のハードルがあがってしまいます。どのような技術スキルの人でも投稿できるというのはオウンドメディアの運営で重要なことなのです」
(小川氏)

開発を担当するCTOの宮前竜也氏(左)と企業の導入支援を行う代表取締役の小川虎太郎氏(右)

Clipkitは、オウンドメディアシステムの受託開発過程から生まれたそうだ。

「過去オウンドメディア用途のCMS構築のご相談を頂くときに、WordPressを指定されることがよくありました。その開発経験から、お客様の要望をまとめて新たなプロダクトとして作ったものがClipkitなんです」
(宮前氏)

試験的にClipkitを導入したオウンドメディアが大きく成功したことが同社にとって大きな自信になった。現在は、SaaS型とサーバーインストールのパッケージ版を提供しており、導入サイト数は300を超えている。

純粋なオブジェクト指向言語のRuby

「Rubyと出会ったのは15年前くらいになります。それ以前はよくPerlやPHPを利用していました。Rubyは、Perlよりも強力なテキスト処理機能を持ち、開発当初からオブジェクト志向プログラミング言語として作られているところに魅力を感じました。また、Javaのような冗長性が少ないのもいいですね。コードを読むのも書くのも、楽しい言語だと思いました」
(宮前氏)

更に今では、Railsの流行によってWeb系開発にともなう様々なエコシステムが構築されている。

「Railsは今でも活発に開発が続いているWebアプリケーションフレームワークです。Railsのバージョンアップに追従していけばWebの技術トレンドをいち早く製品に取り込むことができるのは大きな利点ですね。バージョンを上げるためにはテストを書く必要もあるのですが、それがソフトウェアの質を高めることにもなりますし、結果、お客様の利益にもつながります」
(宮前氏)

現在はSaaS版、パッケージ版と2つの利用方法があるClipkitだが、パッケージ版ではGitHubのプライベートリポジトリに招待する形で納品としている。機能拡張をしたい場合は改変許諾契約を結ぶことによって可能となる。それにともない、顧客側から本家のリポジトリにプルリクエストが来るということもあるそうだ。要望の多い機能などはプルリクエストを取り込むなど、本家のマスター側で機能提供をするようにしている。そのようなソーシャルコーディングスタイルの開発でもRailsが役に立っている。

「Railsであれば、設定より規約の原則があるので、外部からの機能拡張のプルリクエストに対しても、どこに何を見に行けばいいのか分かりやすい。少人数で開発するにあたって時間を無駄にしないという観点から重要です。Railsは素早くリリースできることに注目が集まりがちですが、ある程度大きな規模のアプリケーションになったとしても、規約があることで保守性が高いというのが魅力です」
(宮前氏)

Rubyで小さな組織でも影響力のあるプロダクトを

現在、主に会社運営業務や導入支援営業を小川氏が行い、開発は宮前氏と在宅で働くプログラマ1名が担当している。ラグル社は少人数の人員構成でプロダクトが急拡大している、いわゆるスタートアップ企業なのだが、今回の取材でなぜRubyがWebのスタートアップ企業で広く採用されているのかという理由を改めて理解できた。

現在でも活発に開発が続く新規性であったり、宮前氏が述べた保守性。さらには、柔軟性や開発スピードであったりと、Web開発に必要とされる要素を高いレベルで実現しているのは、やはりRuby及びRailsの大きな利点だ。この2つのコミュニティーが動き続ける限り、Clipkitのような優れた新たなWebサービスが今後もRubyで生まれてくるだろう。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2017年4月)のものであり、現在変更されている可能性があります。