スタディプラス株式会社

学習を助けるSNS「Studyplus」で自立的に学習する仕組み作り

2018年12月13日に東京都内で開催されたRuby bizグランプリ2018で大賞を受賞した「Studyplus(スタディプラス)」はスタディプラス株式会社が提供する学習管理SNSである。(本記事ではサービスを指す場合はStudyplus、会社を指す場合はスタディプラスと表記する)
Studyplusは、ユーザーには「スタプラ」の愛称で呼ばれている。
まずは広報の黒須氏にサービスについて伺い、CTOの島田氏とFor School事業部の松田氏より技術的な話を伺った。

学習管理SNS Studyplus

Studyplusは、ユーザーが何をいつどれぐらい勉強したか記録して可視化し、他のユーザとシェアしあう学習管理SNSである。

ユーザーは大学受験生がメインだが、社会人も語学学習や読書管理などに利用している。ユーザー数は累計400万人を超える。

このサービスのアイデアは代表取締役の廣瀬氏の高校時代の経験が元になっている。当時所属していたバスケ部で活躍していた、勉強もよくできる先輩に教えてもらったのが「自分がいつ、なにをどれぐらい勉強したかをノートにつける」という方法。自分自身も試してみて、モチベーションが上がったという経験からこれをサービスにしたものだ。
当初はSNS機能はなかったが、ユーザーの「学習意欲の高いユーザーが集まっているのだから、お互い交流して切磋琢磨したい」という要望から作られたものである。

大学進学率が過半数を超えた現在でも、受験仲間がいない受験生は案外多い。
地方の高校や進学率の高くない高校の生徒が「受験友だち」がいないのは想像に難くないが、たとえ進学校や塾に通っている生徒であっても、マイナーな学科志望などで周りに「同じ目標を持った仲間」がいない受験生は少なくないそうだ。彼ら、彼女らが「同じ目標に向かって一緒に頑張れる友だち」を見つけるお手伝いができるのがこのサービスの特長でもある。

Studyplusを展開した新たなサービス「Studyplus for School」

さらに、2016年にはStudyplus for Schoolというサービスも開始した。

こちらは学校や塾など教育事業者向けのサービスで、生徒のStudyplusと連携させて使用する学習管理プラットフォームだ。
学校や塾の先生が、生徒の学習状況を見てコーチング的な使い方をする。これまで生徒との面談や会話などからしか得られなかった、生徒の学習状況を把握できる。
これによって生徒の頑張りが可視化されるため、見落としたり気づかなかったりするささやかな頑張りにも気づくことができる。それに対して先生が「いいね」とリアクションしたり、コメントをしたりして生徒のモチベーションを上げることができる。生徒のやる気を刺激し、継続させることを支援するサービスである。

ユーザーが見える開発スタイル

Studyplus開発部はエンジニアのみで構成されている。一方、2016年に発足したFor School事業部はエンジニアだけでなく、カスタマーサクセスチームなどエンジニア以外も同じ部署にいる。

スタディプラスではスクラムを採用し、デイリー・スクラムを夕方に実施している。
Studyplus開発部は、各プロジェクトのチームや職種毎のグループで実施し、状況の報告はSlackを使って全員に共有している。
For School事業部では、事業部全員で実施し、エンジニア以外も参加する。そのため、カスタマーサクセスチームに届くユーザーの声もエンジニアまで日々届く。

ユーザーの声からは、要望の他にも、どのような使われ方をしているのかを知ることができるなど得られることが多い。

エンジニアとしてこのサービスに関わっていて良かったことを聞くと、次のような答えが返ってきた。
「Studyplus for Schoolではユーザーが退会する(StudyplusとStudyplus for Schoolの連携を解除する)時に理由を書いてもらっているのですが、春になると『志望校に合格したので塾をやめるから』という理由でやめる人がたくさん出てきます。それを見ていると生徒さん一人一人が夢をかなえられてる、目標を達成できたんだなというのが目に見えて、ジンときます。(For School事業部 松田氏)」

他にも、「Studyplus for Schoolの導入塾や利用を検討している方をお呼びしてイベントをしたことがあるのですが、そこでStudyplus for Schoolの新機能を展示する機会が与えられました。実際に他の人が使っている様子を直に見ることができ多くのことを得ることができました。中でも学校の先生と一緒に来ていた生徒さんが、とても気に入ってくださって、先生に『これで勉強時間のランキング作ろうよー』などと熱心に導入を勧めてくれていて胸が熱くなりました」というエピソードを披露してくれた。

エンジニアでもユーザーと近い位置にいることが、このサービスに関わっていることの醍醐味であるようだ。

Ruby on Railsの良さを活かした開発

あらかじめ大規模なシステムになるとかわかっていれば違う選択肢もあるかもしれないが、スタートアップやベンチャーの場合、そこに一足飛びに行く前に、仮説を検証することが必要となる。絶対に成長するという確約がない中で、短い開発サイクルを回しながらスピードをもって検証していく必要がある。Ruby on Rails(以下Rails)はそのような開発プロセスに適していると思われる。

CTOの島田氏によると、島田氏自身がスタディプラスにジョインした時点でRailsを採用していたため、当初Railsを採用した理由はわからないものの、Railsを使い続けていることには理由がある。

何より生産性が高いこともあるが、その他にもコミュニティが活発なことが挙げられる。そのため有用なgemが多く、参考となる事例も見つかりやすい。さらに問題が起きても、つまづくポイントに対する回答は探せばすぐ見つかるなどの効果がある。

Studyplus for Schoolの場合、一度Railsで構築したサービスを、もう一度Railsで一から作り直した経験があるそうだ。Railsの良さを活かすには、いかにRails way、Railsの流儀に載せるかが重要だ。最初のプログラムは残念ながらRailsの良さを使いこなしきれていなかった。そのため、このまま使い続けるよりもRails wayに則ったものに作り直した方が今後の開発が効率良く進むはず、と判断したからである。Railsはエコシステムがしっかりしているため、何か一つするにしてもそのためのgemがあり、自分たちが書くコード量は少なくて済む。結果、リニューアルも素早くできた。

作り直している期間は顧客にサービスを提供できていない期間でもあるので、なるべく短くしたいという要望があったが、Railsを使うことで、最終的には満足のいく期間で作ることができた。

一方、Studyplusでは2012年から一つのコードを育てている。

Rubyコミュニティに貢献したい

自分達もRubyコミュニティへの貢献をしたいという思いから、勉強会やカンファレンスのスポンサーをしている。2018年のRubyWorld Conferenceにスポンサーブースを出展した際には、「学生の時に使ってました」、「スタプラ知ってるー」という声を直接聞けたことが、とても嬉しかったそうだ。

社員に対しても、勉強会への参加を促してスキルアップをしてもらってるが、様々な事情で行けない人もいる。そういう人のために、Rubyコミッターなどの外部の人を招き、勉強会やコードレビューをしてもらったりもしている。

今後はコミュニティへの貢献はもちろんのこと、OSS開発にも貢献したいと考えており、自分たちでOSSのライブラリを作る活動をはじめている。
冒頭で、Rubyの良さとしてgemが豊富だということを挙げたが、この話を聞いてgemが豊富な理由の一端が理解できた。
活発なエコシステムは、便利に利用できるというだけではなく、自分もそこに貢献したいという熱意を生む。Rubyのエコシステムも、そんなプラスのサイクルが生まれているのではないか。

「スタプラ使って勉強してました!というユーザーの声とともに、スタプラのgemにお世話になっています!というユーザーの声が多くて」という話を伺える日を心待ちにしている。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2019年2月)のものであり、現在変更されている可能性があります。