株式会社グロービス

テクノロジーの力で高品質の学習コンテンツを多くの方に届け、個人の可能性を拡げるグロービス

東京都千代田区に本社を置く株式会社グロービス(以下グロービス)は、経営に関する「ヒト」・「カネ」・「チエ」の生態系を作り、社会の創造と変革を行うことをビジョンに掲げ、事業を展開している企業だ。
同社は社会人向けの経営大学院としては国内最大であるグロービス経営大学院の母体となっている他、オンラインでもビジネスナレッジを学ぶことができる「グロービス学び放題」を提供している。
今回、このサービスがRubyで作られていると聞き、開発を牽引している末永氏、大沼氏にお話を伺った。

グロービス学び放題

グロービス学び放題はどういったサービスなのであろうか。

「もっと学習していきたいという志のある人に対して、いつでも誰でも手軽にビジネスナレッジを学習できるサービスです。これまで大学院を中心にリアルな場でのクラスや研修を提供してきた一方で、校舎に足を運んで学ぶということが、遠方の方や育児などで長時間の外出が難しい方にとっては課題でした。それをオンラインで学習できるようにすることで、ビジネスマンや主婦の方が空いた時間にビジネスナレッジが学べるようになっています。」(大沼氏)

教育業界は少子化の影響で学習塾や予備校の市場規模が年々縮小していく中、eラーニングの市場規模は拡大し続けている。
この背景には、スマホやタブレットの普及により学習環境のハードルが下がっていることの他、働き方改革によって就業時間が短くなり、その分自分のスキルアップの機会に対する投資意欲が高まってきていることもある。グロービス学び放題は、こういったニーズに非常にマッチしたサービスと言えるだろう。

「グロービス学び放題はエンジニアが居ない中専任1名で始まりました。当時の運営はいろんなツールを組み合わせてサービスを提供していて、動画をASPで配信し、クイズの仕組みをアドオンして、データを溜めるためにタグを埋め込んで・・・全て手作業です。学習するユーザー側も動画1つ1つを手で再生しないといけないし、どこまで再生したのかもわからない状態で。ユーザーのニーズに対して柔軟に対応ができる、本当に価値ある教育サービスを実現するために、私が社内初のエンジニアとしてジョインして内製開発を始めました。」(末永氏)

〈 株式会社グロービスの末永氏と大沼氏 〉

ゼロをイチにするRubyの速さと拡張性

「立ち上げの初期は、受講者向け、顧客企業向け、社内管理用の3つ側面を持つサービスを4ヶ月くらいで作りました。ゼロをイチにするスピードはRubyの生産性の高さのおかげだと思います。」(末永氏)

グロービスでは他にも、さまざまなサービスをRubyで構築している。

「グロービス・ラーニング・プラットフォームという、グロービス学び放題の認証基盤になっているシステムがあります。
受講者の行動を分析するにあたって、これまでのシステムだと各サービス毎にデータが蓄積されてしまうため、サービスを跨ったデータ分析ができませんでした。このプラットフォームを基盤とすることで、サービス間を横断して受講者の活動を分析することができるようになっています。」(末永氏)

こういったシステムの連携や拡張を行う際、Rubyの拡張性の高さが役に立っているという。

「プラットフォームはビジネスの変化の影響をよく受ける部分です。最初はデジタルのサービスしかなかったのですが、途中から社内研修もプラットフォームと連携することになって、認証部分を拡張して社内研修も申し込めるようにしました。ベースが異なるサービスを組み込む際に大きな変更を加えることなく進められたのは、Rubyの拡張性によるところが大きいと思います。」(末永氏)

エンジニアが末永氏1人という状態からスタートした開発組織だが、今では正社員・業務委託を合わせると60名まで拡大している。

「3年間で開発組織の規模は0名から60名まで拡大しました。この拡大を支えたのは、新規プロダクトの立ち上げに要する時間の短さ、Rubyが学べるスクールやスタートアップの環境によるものだと思います。優秀なフリーランスの方にも多数ジョインをいただいており、グロービスにはテックリード、CTOクラスのメンバーも多く集まっているのが特徴です。
Railに乗れば誰でもすぐにキャッチアップできるというメリットも大きいです。Rubyの言語仕様やオブジェクト指向、RSpecの文章を読むような読みやすさ、書きやすさは詳細なドキュメントを必要とせず、キャッチアップにかかる時間は圧倒的に少ないと思います。」(末永氏)

グロービスのこれから

グロービスの今後の展開について伺ってみた。

テクノロジーの力でより多くの人に学びを提供していきたい、と末永氏。

「プラットフォームのデータの力を使って、より付加価値の高い学習も提供していきます。その人が持っているスキルや経験を可視化することができるようになれば、その人がどういうコンテンツを学習していけばよいのか、どういう配属であれば良いのかということが解るようになります。これによって人事の方が従業員の学習状況をマネージメントしたり、受講者自身がどう勉強していったら良いのかが解るようになります。」

変化に強いサービスにしていきたい、と大沼氏。

「サービスがモノリス化して大きくなってくるので、どう分割していくかというのはテーマになってきます。今後も、サービスが大きくなっても開発速度が落ちない、変化に強いサービスを作っていきたいです。また、REST APIはパフォーマンス・柔軟性に課題がありましたが、柔軟性の高いGraphQLが早い段階で導入できました。GraphQL Ruby というgemがRubyというエコシステムの中にあったからこそ、迅速な導入が実現できました。」

この他にも様々な取り組みを考えているという。

「世の中的にオンライン学習は継続率が低いと言われています。続かない中でどれだけ深く学んでもらえるか。それには、学習のスタイルが画一的な一方通行になりがちなので、双方向やコミュニティを通した学びを感じられるようにしたいと考えています。また、より深い学びができるようなレコメンドや、AIを活用して学習の効率化も考えています。」(末永氏)

マルチステージ化する人生と学び

人生100年時代と呼ばれる現在は、これまでの人生モデルが通用しない時代に突入している。いずれ訪れるセカンドステージに備えて、年齢にかかわらず新しい知識を学び、セカンドキャリアを形成していくケースも珍しいことではなくなってくるだろう。AIの進化やテクノロジーの発達により仕事を行う環境もめまぐるしく変化する中、マルチステージ化する人生に対応できるスキルを身に付けたいという気運は今後も高まってくると考えられる。

テクノロジーの力で高品質の学習コンテンツを多くの方に届け、ビジネスパーソンの可能性を拡げるグロービス。
今後も活躍に期待したい。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2019年9月)のものであり、現在変更されている可能性があります。