株式会社アカツキ

優秀なRubyエンジニアが創り出すハートドリブンな世界

フィーチャーフォンの登場と通信インフラの発達に伴い、私たちの自由な時間の過ごし方は様変わりしている。SNSや動画といったインターネットで得られる情報に消費する時間が増え、スマートフォンの登場以降は移動の間のちょっとした時間でも、インターネットを通して好きなコンテンツを楽しむようになっている。
モバイルゲームは、私たちがそういった可処分時間を過ごすコンテンツの1つだ。

東京都品川に本社を置く株式会社アカツキ(以下、アカツキ)は、数多くのモバイルゲームを創出している会社だ。同社はゲーム事業のほか、ライブエクスペリエンス事業も手がけていてリアルな体験も世の中に提供している。
今回、同社のビジネスの様々な箇所でRubyが利用されていると聞き、CTOの田中氏、島村氏にお話を伺った。

スタートアップの柔軟性を支えるRuby

アカツキは2010年にマンションの一室で、3名で始まった会社だという。創業期からRubyを使い続けている同社が、Rubyを採用した経緯はどのようなものだったのだろうか。

「2013年頃まではフィーチャーホン向けのゲームを中心に作っていました。あの頃の開発は技術仕様にWAPというのがあって、配信するコンテンツの容量が100kbを超えてはいけないなど多くの制限がありました。そういう中で毎週のようにアップデートをしながらゲームらしい表現方法を模索していくのですが、Rubyの動的な型付やオープンクラスという特徴は、柔軟な対応を求められる当時の状況に適した言語でした。」(田中氏)

続けて同氏は当時を次のように振り返る。

「当時はRuby 1.8系で、RailsによるWebアプリケーション構築の生産性の高さに業界が注目している時期でした。Ruby/Rails系の勉強会に参加するエンジニアは技術に対して貪欲な人が多く、総じて優秀だったと記憶しています。Rubyも発展途上だったこともあって、この発展途上の環境の中で活動するマインドも相性が良かったのです。」(田中氏)

〈 株式会社アカツキのCTO田中氏 〉

ビジネスと優秀なエンジニアを繋ぐRuby

現在は社員がおよそ200名、このうち50〜60人がエンジニアという規模にまで成長している同社。
Rubyを採用していることが質の高いエンジニアを獲得し続けられる一因なのだという。

「とにかくたくさん優秀なエンジニアを獲得するために、採用のチャネルはたくさん作っています。情報発信でブログを書いたり、広報活動としてスポンサーをやっているのもその一環ですが、これは会社で指示したわけではなく自然とやっている活動です。Rubyの人たちはRubyが好きで、RubyKaigiなどで発信したり参加したりすることを良しとする文化があります。Rubyのコミュニティにこういう考え方が前提としてあるということが大きいと思います。」(田中氏)

こう聞くと、Rubyに精通している人ばかりが入社しているのかと思ってしまうが実際はそうでは無い。

「Ruby以外の言語で実績のあるかたであれば入社してからすぐにRubyでもバリューを出せており、不自由なくパフォーマンスチューニングなどをしていただいています。一定の経験があれば学習コストがかからないのがRubyのいいところです。」(島村氏)

大規模トラフィックの対策と品質管理

同社が手がけるゲームはいずれも大規模トラフィックに備えた負荷対策が必要だ。パフォーマンスチューニングや品質管理はどのように実施しているのであろうか。

「アプリケーションエンジニアがインフラも見るというのが会社の方針です。得意な領域の濃淡はありますが、全部できますという人が入ってくるより、だんだん学んでいく人の方が多いです。品質管理の面については、サービスが1時間停止すると何億円という影響がありますので、しっかりした体制を組んでいます。RubyはRSpecがありますのでテストしやすい言語だと思います。」(田中氏)

「Rubyのバージョンを上げると早くなるということがあるので、ここを追従していくことがパフォーマンス的にも重要と考えています。またセキュリティの面も含めて既存の環境にも新しいバージョンを適用し続けていくことに気をつけています。」(島村氏)

他にも取り組みとして、Rubyのコミッターである松田氏や小崎氏を技術顧問として迎えアドバイスを受けられる体制を整えている。活発なコミュニティから情報を得られる事もRubyのメリットとして挙げられると両氏は語る。

〈 株式会社アカツキの島村氏(左)とCTO田中氏(右) 〉

リアルな感動もRubyで

モバイルゲームを中心に活動している同社だが、リアルな感動も提供すべくエンターテイメントの業界にも参入している。

「2016年くらいからリアルなエンタメを事業として展開していこうということで、アウトドアレジャーを紹介するサイトをM&Aして、この運営をやっています。他にも、アカツキライブエンターテインメントというリアルなエンターテイメントを提供する会社を作って、横浜の施設をリノベーションしてそこでサービスを提供したりしています。」(田中氏)

こうしたリアルなサービスを提供する場所でもRubyを活用しているという。

「PONG!PONG!という卓球とブロックくずしを組み合わせたようなものを作りました。卓上へのプロジェクションマッピングの部分はUnityで、球のトラッキングシステムは他社様の仕組みを使いましたが、球の軌道の未来予測をする部分でRubyを使って開発しています。」(田中氏)

アカツキとRubyのこれから

さまざまな所でRubyを活用している同社の今後について聞いてみた。

「ゲームというボラティリティの高い事業で、ビジネスのスケールに合わせて人もスケールさせていかないといけないといけません。技術者の市場で考えるとRubyは質の高いエンジニアが多く、今後も有効な選択肢と考えています。」(島村氏)

プロダクトの数や規模の増加に伴って人も増やしていくわけだが、見方を変えれば人の数でプロダクトの数が制限されてしまっているという面もある。今後も同社は優秀なエンジニアを積極的に採用していく方針だ。

「ゲームの開発でいうと、品質とかレイテンシを求められるようになっているので、どう堅牢な開発をしていくかというのが1つのテーマです。Rubyを採用することで、gemなどOSSありきのエコシステムの世界でエンジニア組織を醸成することができました。その延長線でGoやElixirなどエコシステムにある言語も、うまくマイクロサービス化して使っていこうという方針です。PoCみたいなのをやるときには形として見た目がちゃんとできるのが重要で、Ruby on Railsは今後も非常に有効です。」(田中氏)

大手携帯会社が2020年の商用サービス開始を目標に進めている「5G」はもう目前に迫っている。これによって私たちの生活環境は大きな変化を迎える可能性を秘めている。
目まぐるしく移り変わるインターネット環境の中で、Rubyと共に常にワクワクと感動を提供し続けているアカツキ。これからも新たな感動を提供し続けてくれるに違いない。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2019年11月)のものであり、現在変更されている可能性があります。