ガリレオスコープ株式会社

オンラインイベントでもオフラインの時と同じ体験ができるようにしたい

コロナ禍で急激な変化を求められた2020年、色々なイベントがオンライン開催された。
みなさんも一度はZoomなどを使ったオンラインイベントに参加したことがあるのではないだろうか。
今回は、オンラインイベント開催するにあたり、自分たちのイベントに適したプロダクトを開発した例を、ガリレオスコープ株式会社 CTOの藤井 宏行氏にお聞きした。

〈 CTOの藤井氏 〉

GALIMO(ガリモ)はガリレオスコープ株式会社が開発したオンラインベントツールである。制作担当者が紹介した動画があるので、詳しくはこちら(https://youtu.be/Ab1T1JuWeDo)を見てほしい。

転職、就活イベントに最適化したオンラインイベントシステム

GALIMOは汎用的に何にでも使えるシステムであるが、主に転職・就活イベント運営に必要な機能が充実している。
というのも、このシステムを開発するきっかけとなったのが、9月に開催された IT WORKS@島根のオンライン開催だからである。

ガリレオスコープは以前からIT WORKS@島根のUIターン事業を受託しており、リアルでのイベント開催実績を多数持っている。
今年のイベント開催について検討しはじめた春頃、リアルイベントの開催は難しいのではないか、ということになった。
そこで、色々なオンラインイベントを開催できるツールを調べてみたが、満足できるものがなかった。
例えば、ZoomやMeetなどではツールの仕様による制約に合わせざるを得ないし、当然カスタマイズはできない。実際、ツールの仕様に引っ張られて出展者や参加者が使いづらくなる懸念があった。
一方、ガリレオスコープはリアル開催を多数こなし、イベント開催のノウハウも持っており、自社サービスの開発や受託開発の実績もある。
そこで、イベントに関わる人たちが使いやすいプラットフォームをオンラインサービスとして開発することになった。

ターゲットユーザーを考慮し、リアルイベントを再現する形式にした

UI(User Interface)はなるべくリアルイベントに近い形とした。(下図参照)
画面はリアルイベントで配布していた会場案内図をイメージしたもので、これまで案内図を見ながら会場を徒歩で移動していたものを、画面上に表示された会場案内図の上で移動するようになっている。行きたいところへ一瞬で移動できる。
2Dで一見シンプルな画面のように見えるが、参加者が皆リッチなPCやネットワーク環境を持っているわけではないため、できるだけ「重くならないように」ということを考慮したからである。
とはいえ、面談機能もあるため、ビデオ通話はサービスとして欠かせない。そのため通話できる程度の環境は必要であるが、それ以外は極力「軽くなるように」心がけている。

また、リアルイベントでは会場入り口には参加企業のパンフレット置き場があり、それを見て、気になる企業のブースを見に行ったりする。オンラインの場合にも、資料コーナーと称して参加企業の資料リンク集があり、資料を見て気になる企業のブースに行ってみるという体験はリアルイベント同様に可能である。

各社のブースもこれまで通りテーブルがあり、そこで面談をしたり、面談の順番待ちをしたりできる。
ブースはロック可能で、ロックをすれば1対1の面談内容を他の人に聞かれることもない。
ブースのテーブルには、誰でも見ることができるメッセージを表示することができ、例えば、担当者がお昼等で不在の時に「お昼に出ています。13時に戻ります」などと書いておくこともできる。

会場レイアウトは、リアルイベントの会場設置のように、椅子やテーブルを自由に配置することができる。
テーブルによって椅子の数を変えることもでき、1テーブル13人程度着席可能である。
双方向コミュニケーションだけでなく、例えば新卒採用の会社説明などのようにライブ配信をしたり、コンテンツを流したりすることもできる。さらに、BGMを流したりもすることができる。

リアルイベントでは全体アナウンスがあるが、これは全体チャットで実現している。
さらに、DM機能もあるので、個別に話しかけることもできる。

参加者はアイコン表示される。
自分自身や他の人がどこにいるか表示されるため、リアルイベントのようにその場に行ってみなくても混み具合がわかり、状況をみながら移動することも容易だ。
リアルイベントでは申し込み時の希望職種で名札のストラップの色で識別できるようにしているが、オンラインでも同様にアイコンにつけたバッジの種類で識別できる。
また公開プロフィールを登録できる。これには企業に対してアピールしたいこと、興味分野などを自由に記載でき、企業側はそれを見て、自社に興味を持ってくれそうな人にメッセージを送ることができる。
会場内のどこにいても声をかけることができるのはオンラインの良さである。

リアルイベントでできることをオンライン化し、オンラインの特長を活かしてさらに便利になるところは取り入れている印象だ。

出展者の負担も最低限に

就活イベントはIT業界だけではないので、参加者のITリテラシーが高い人ばかりではない。
オンラインイベントに参加するのは初めてという人にもわかりやすいシステムであることに気を配っている。
なるべくシンプルで、説明書は必ずしもみんな読んでくれるわけではないので、読まなくても直感的にわかるように心がけている。

オンラインイベントに出展した方の中には、動画作成などリアルイベントとは違う準備が必要で、これまでとは全く違う状況に戸惑ったり、これまで以上に大変だったという感想をお持ちの方も多いのではないだろうか。
このシステムを使ったUIターンイベントの出展者の場合、オンライン化のために新たに必要になった作業はなく、作業量もコストも削減している。
例えば、交通費や会場におく幟、ブースに設置する液晶やPCなどが不要となった。
印刷していた会場設置用のパンフレットもPDFなどで用意すればよい。
ブースの設置に人手が必要だったが、会社のロゴと募集している職種など必要事項をテキストファイルで用意すれば、システム側に反映されブースの形になる。

GALIMOを使ったイベントに出展した企業の反応は全般的に好意的で、「おもしろいシステムですね」という声もあったそうだ。
出展社にはシステムの使い方のマニュアルを配布し、各社と個別にリハーサルを実施した。
リハーサルでは、音声や映像のチェックを行うとともに、システムの使い方についても再度説明を行った。
その際に、機能の使い方の説明も行っていたため、
「当日は困りごともなくすんなり実施できていたようです」(藤井氏)

システムもイベントの企画運営も両方できる会社であるため、システムに細かい気配りができている。

会社について

ガリレオスコープではサーベイコンサルティングから、Ruby on Rails(以下Rails)を中心とした受託開発まで、様々な事業を行っている。詳しくは事業紹介のページを参照してほしい。

自社サービスとして、QUICK SCOPEを作成しており、新しいサービスとして、「GALIMO」が追加された。
これらにRailsが使われている。

「アンケートや、キャンペーンのサービスもそうですが、基本的にワンストップでできるというのを売りにしています。
イベント企画もシステムも両方やっているところは少ないと思います。
このオンラインのイベントも、まるっとお任せいただければ、ノウハウや技術を組み合わせてよしなにやりますという感じです。」(藤井氏)

Ruby on Rails以外の選択肢はなかった

GALIMOにRailsを使った理由を伺ってみたところ、Rubyが社内の共通知識であるため、Railsで作成すればプロジェクトに誰でも参加できるためというのが一番大きかったそうだ。
では、なぜRubyなのかについては、約13年前のガリレオスコープ立ち上げ当初はJavaを使って開発していたが、Rails2の生産性が非常に高いことに着目して開発をすべてRailsに切り替えた。また、Railsを使い続けている理由としては、「安定感」と「Gem」というキーワードをあげてくれた。
「Rails自体の安定感、それに、Gemが豊富で細かいところまで気が利くところ、外部ツールを使って開発するのも容易にできるし、リファレンスが整っているものも多いです。」(藤井氏)

「例えば、GALIMOではAmazon Chimeを使っています。ベースのSDKがGemで公開されているので、これを使うとAmazon Chimeの部分はすぐに試してみることもできます。実際、実装も素早くできました。」(藤井氏)

2つのGemが最終候補に残った場合、どちらも試してみることもあるそうだ。
「深く使ってみないと、つまるポイントとかわからないので、ちょっと試してみるということをさらっとできるのも良いところです」(藤井氏)

また、今後クライアントに合わせたカスタマイズの増加を予想しており、守備範囲の広いRubyが最適だった。

Rubyで開発したことの効果

約4ヶ月という短期間で実装できた。また、一度イベント開催した後に内部実装を大きく入れ替えたが、2ヶ月ほどでできた。
Rubyが素早く書けることの他に、社内の共通技術としてRubyが位置付けられている、別プロジェクトのエンジニアにも社内勉強会などで仕様を共有している等から、スポットでの実装参加も効果的に可能となっていることを挙げてくれた。

Ruby on Railsで作っておけば安心

GALIMOはフロントはNuxtで作成し、Railsはバックエンドを担当している。
「どんな要件にでも合わせられるのが、Railsの良いところだと思います。もちろんすべてRailsで作ることもできるし、今回のように、フロントをJSで作成してもバックエンドとして使えます。API以外の要件が出て、Rails側で吸収しなければならないものが出てきたとしてもそのまま対応できます。仕様に対して柔軟だと感じていて、Railsを使っておけば間違いないという感じです。どこかが尖っているというわけではなくて、何にでも対応できるところが良いところだと思います。」(藤井氏)

さらに、
「後で仕様が変わって、このフレームワークだとちょっと厳しいなってことがあるじゃないですか。そういう時にRailsだと別のフレームワークへの載せ替えもしやすいし、構成を変えた時にも総取り替えにならず、基盤としてRailsを残しておいてなど、いろんなことができるので、あとの展開を心配しなくて良い。できないなら他のものを取り入れようということが簡単にできるので、技術選定の時にあれこれ無駄に心配する必要がないという安心感があります。」(藤井氏)

キャリアチェンジでRuby on Railsエンジニアに

藤井氏は元々エンジニアではなく、ガリレオスコープに転職が決まってからRubyやRailsの勉強を始めたそうだ。
これまでRubyやRailsを使ったことはなく、自分の研究用のコードを書くためにC#やJavaを使ったことがある程度だった。
就職が決まり、業務開始までに半年程度あり、その間、夜や休日に少しづつ独学で勉強していた。4,5ヶ月続けていたら入社する頃には、仕事の内容はだいたいわかるようになっていたそうである。
具体的にどんなことをしていたのか伺ってみたところ、
「Railsチュートリアル」や「パーフェクト Ruby on Rails」、「実践 Ruby on Rails」を順番にやっていき、わからないところを先輩に質問していたそうだ。

「Railsチュートリアルはコンテンツとして優秀だと思う。よく考えられていると思います。
初心者用では、実践では使えないものもよくありますが、Railsチュートリアルはそんなことはまったくなく、本当に基本の技術になっていると思います。これをしっかり習得するだけでも、基礎練としては十分かと思います。」(藤井氏)

「業務でコードを書くようになって感じたことは?」の問いに対しては、
「ちゃんと書かれてるなと思いました。ちゃんと組み立てられてるなというか、初心者向けに言うなら、ちゃんと基礎工事をして、その上に建物を建ててってちゃんとやっている。
研究のプログラムだと動けばいい、自分の説明したい理論を数式で書くだけなので、前準備とか考えることもなく書くという感じですが、お客様に納品するようなものだと、きちんと設計して、前準備して、これでDBやモデルの設計が破綻しないか要件と照らし合わせて考えて、その上で実装をしっかりしていくという感じなので、地ならしして、基礎を作って、上に建物を建てるということがきちんとやられているなと思いました。」(藤井氏)

※本事例に記載の内容は取材日時点(2020年11月)のものであり、現在変更されている可能性があります。