株式会社すむたす

対話を大切にしながら作り出す、新しい不動産売却

今回は、Ruby bizグランプリ2020で特別賞を受賞した「すむたす買取」について、株式会社すむたすの取締役である伊藤 友也氏とエンジニアの向山 正純氏にオンラインにてお話を伺った。

〈 伊藤 友也氏(上段)と向山 正純氏(下段) 〉

株式会社すむたすは、2018年の1月に設立した、現在社員数20名の会社である。
宅建事業者の免許を持ち、テクノロジーを活用した不動産の買取再販業を行っている。
「私たちが解決しようとしているのは不動産売却の課題です」(伊藤氏)

伊藤氏によると、不動産を売却する場合、大きく3つの課題があるそうだ。
1つめは、不透明な価格査定と余計な手数料がかかること、
2つめは、いつ売れるかわからないこと、
平均の売却期間は5~6ヶ月と言われており、中には1年以上もかかる場合もある。
さらに、申し込みがあっても買い手のローン審査落ちで不成立になる場合もあるなど、いつ売れるかわからない。
3つめは、やらなければならないことが多すぎて、心理的にも手間的にも負担が大きいこと、
仲介会社とのやり取り、買い手からの値引き交渉、突然入る内見対応などがある。
売れた後にも故障や不具合などのクレームがあるかもしれないという不安が残ったりもする。
すむたすでは、これらの価格、時期、手間の課題を解決したいと思ってる。

海外の事例では、2014年にOpendoor(オープンドア)という会社が米国で創業し、iBuyer(アイバイヤー)いう言葉が生まれている。
米国のiBuyerは、Opendoor、Offerpad(オファーパッド)の他、不動産ポータルサイトのRedfin(レッドフィン)も一部エリアでiBuyer事業をしている。
すむたすは、このiBuyer事業を日本で展開している。

すむたす買取

すむたす買取は、「ラクに確実にマンションが売れる」サービスである。
査定から売却まで、大半のプロセスがオンライン上で可能だ。
物件について、1分程度でできる簡単な情報入力をするだけで、最短1時間で買取価格がわかり、最短2日、売りたいタイミングで売ることができる。

現時点では、対象物件は首都圏のマンションとし、一戸建てや土地は扱っていない。
一戸建ては物件ごとの品質の差が大きいため、価格をオンラインで出すことが簡単ではないそうだ。
さらに買い取ったあとのリスクも考慮して、今のところはマンションにフォーカスしている。

コミュニケーションを大切にしている

すむたすではフルリモートで働いているメンバーも多く、コミュニケーション設計や、働きやすい組織づくりには注力して取り組んでいるようである。
社内のコミュニケーションはうまく取れているとのことだが、なぜうまくいっているのかについて3つ挙げてくれた。

1つめは、コミュニケーションの頻度が多いこと。
開発チームも含め、各チームごとに毎日10分程度のデイリースクラムを実施している。
他にも役員が全社員と2週間~1ヶ月に1回の頻度で1on1を実施しているそうだ。
ここでは仕事に関することに限らず、普段感じていることなどざっくばらんに話しているそうだ。

2つめは、全メンバーで目線を揃える機会が多いこと。
月に一度、株主に事業報告をする会があり、全メンバーが参加している。
他社の例では、経営陣のみ参加するケースも多いが、すむたすは全メンバがー参加し、会社の状況や方針を共有している。

3つめは、チームを横断したコミュニケーションの機会が多いこと。
「開発チームだけ」などチームごとのコミュニケーションだけでなく、全メンバーでユーザーの課題に向き合い、ユーザーに対して何ができるのかについて、チームを横断して考える機会も多い。

「毎日10分でもいいからコミュニケーションをとる、一週間に1回60分話すことと、毎日10分話すことではやっぱり毎日10分話した方がいいと思っています。
その点をデイリースクラムなどで担保できていることが、うまくいってるポイントの1つだと思います。」(伊藤氏)

「リモートワーク、オフィスに行くこと、それぞれメリットとデメリットがあると思います。
コミュニケーションに関しては、オフラインの方が取りやすい面もあるかもしれません。
しかし、オンラインでも工夫次第では優れたコミュニケーションがとれて、スムーズにチームで働くことができると思います。
特にエンジニアの場合、他の職種に比べてリモートでも働きやすいと感じています。」(向山氏)

意図的に雑談をする

すむたすでは「雑談会」というのがあり、これはエンジニアチームから社内に広がったのだそうだ。
オンラインではどうしても雑談が少なくなってしまう。
そこで意図的に雑談する時間を設けて、エンジニア内で業務に関係することに限らずざっくばらんに話すミーティングを、毎週時間を決めてやっているそうである。
「他のサービスについて調べたことをもとに、自社サービスの改善点を話し合ったり、時には本当に雑談になってしまうこともあるのですが…笑」(向山氏)
言いやすい雰囲気がうまく作れているようで、改善点の指摘なども言いやすいそうだ。

それを見た他のチームの人たちが、これは良さそうということで、取り入れていき、社内に広がっていったとのことだ。

カルチャーが大事

話を伺う中で「カルチャー」というキーワードが何度も出てきた。
すむたすではカルチャーを大事にしているとのことで、そのあたり伺ってみた。

私たちは「カルチャーとは、は、暗黙的な行動規範」だと思っています。
ルール化されていない、そこにいる人たちの振る舞いの傾向です。

時間が経って、最適なカルチャーが変わることもあります。
事業フェーズが変わる、メンバーが変わるなど、もちろんその時に良しとされる振る舞いも変わります。だからこそ、カルチャーは定期的に見直すというか、話し合う必要があると思っています。

またミッション・ビジョン・バリューのバリューも、定期的に見直しています。
すむたすでは、1年に1回ぐらいやってるんですけど、今ちょうどまさにバリューの見直しについて全メンバーで議論しているところです。」(伊藤氏)

向山氏がすむたすにジョインして感じたことを、以下のように話してくれた。
「かなり密にコミュニケーションをとっていると思いました。
コロナ前から主にリモートワークで働いているのですが、やはりオンラインだとコミュニケーションが疎かになりがちです。
すむたすに入ってから、ミーティングも良い意味で多く、コミュニケーションも、エンジニア内、他チームともそれぞれうまくとれていると思います。
お互いにコミュニケーションしつつ、文化が熟成されるような、そんな感じがあるのかなと思ってます。」(向山氏)

顧客の声を聞く

すむたすでは、ユーザーヒアリングを積極的に行っているそうだ。

「私たちは、これまでにない、新しい不動産の売り方をつくっています。
ユーザーに圧倒的に優れた体験を提供することが大事だと思っています。
私たちが何をすればよいかはユーザーが知ってるので、多くのユーザーにヒアリングさせていただいています。
売却してくださった方、売却を検討しているいる方、まったく売る気のない方、どのセグメントのユーザーにも聞いています。
家を売却してくださったお客様には、ご契約いただいた後に、必ず30分間のインタビューをお願いしています。」(伊藤氏)

ユーザーからヒアリングした内容は、プロダクト、マーケティング、セールスなど全メンバーで共有している。
そこで見つけた課題に対して、役割ごとにできることを素早く実行する。
これがうまくできている要因として、すむたすでは「グロースチーム」という考え方をしているからではないかと話してくれた。

マーケティング、プロダクト、セールス、オペレーションをすべて同じチームと捉えて、グロースチームという呼んでいるのだそうだ。
「グロースチームとしての目的は、ユーザーに価値を提供することです。
開発の人はコードを書く、マーケティングの人はマーケティングメッセージを作る、アウトプットの仕方が違うだけで、ユーザーに対する価値提供という意味では同じです。
ワンチームで、同じ目線を持ち、ユーザーの声に向き合っています。」(伊藤氏)

やることは違えど、解決しようとしている課題は同じであるため、職種をまたいで協力し合いながら、素早い価値の創造ができているようだ。

Railsの強みは新規開発

開発にはRailsを使っているそうだ。
Railsを使って良かったところを伺ってみた。
「gemが豊富なところです。
他にも、解決したい問題を別の誰かがすでに解決していたりなど、情報も多いです。
日本語の情報が他のプログラミング言語に比べて多いので、問題が解決しやすいと感じています。
あとは、やはり、Railsを使える人が多いのも利点だと思います。」(向山氏)

細かいリリース、細かいリファクタリング

素早い開発ができているとのことであるが、どのように開発しているのか伺ってみた。
「開発はスタンダードなやり方で行っています。
テストやリリースを自動化したり、スクラムを取り入れたりしています。
世間で言われるリリースを速くするための方法っていうのは、網羅しています。」(向山氏)

「スモールにチケットを切ってリリースすることは、意識しています。
あるタイミングで大規模なリファクタリングをしようとすると、そこで開発が止まるし、影響範囲の調査なども大変になるので、リファクタリングは常に必要なだけやるという方法でやっています。
細かいリリース、細かいリファクタリングによって、素早い開発と高い品質が実現できていると思います。」(伊藤氏)

リファクタリングは、エンジニアの裁量で行っているそうだ。
向山氏の場合、どんな時にリファクタリングしているのか話してくれた。
「開発していて、既存のコードをみていて、ここわかりづらいなとか、ここもうちょっとこうやるとうまく書けるなってところは随時やっている感じです。
テストも自動化されているので、ここを書き直したらテストも一からやり直し、ということもないので。」
もちろん、一人で決めるだけでなく、他のメンバーと話しているうちに、ここは直そうとなったらその場で直したりもするそうだ。

今後について

「不動産売却において、まだまだ誰もが知ってるサービスであるとは言えません。
サービス自体もまだ、すべての顧客が全くストレスがなく使える状態ではないと思っています。
不動産売却をもっとにラクで確実にできるよう、サービスの改善を素早くしていき、『家を売るなら、すむたすで!』と思っていただけるようにサービスを進化させていきたいと思っています。」(伊藤氏)

※本事例に記載の内容は取材日時点(2021年10月)のものであり、現在変更されている可能性があります。