株式会社Relic

顧客の事業や地域と共に会社もメンバーも成長していきたい

今回は、Ruby bizグランプリ2021でThrottleでDX賞を受賞した、株式会社Relicのプロダクトイノベーション事業本部マネージャーの佐々木 淳一氏、エンジニアの横山 淳平氏、島根拠点拠点長の大西 圭佑氏にお話を伺った。

〈 大西氏 〉

株式会社Relicは2015年に設立し、現在従業員数は約220名である。
事業内容は、大きく分けて、

  • インキュベーションテック
  • 事業プロデュース
  • オープンイノベーション

の3つがある。そのうちインキュベーションテックと事業プロデュースでRubyが使われている。

インキュベーションテックはRubyで自社開発しているThrottle、ENjiNE、Booster等を使用し、クライアント企業の新規事業開発を支援している。

Throttle(スロットル)は新規事業創出プログラムやアイデアソンなどのインキュベーションプログラムにおいて、アイデアの創出から磨き込み、アイデアの評価/審査、チームの組成、といった事業化までの活動を一元管理できる新規事業開発に特化した国内シェアNo.1のSaaS型プラットフォームである。

ENjiNE(エンジン)は自社に合ったクラウドファンディングサイトを無料で簡単に構築できるSaaS型プラットフォームである。ENjiNEを使って構築されたサイトはネットワーク化されており、相互送客も可能である。

Booster(ブースター)は、Webサイトでの顧客の行動データと、自社が管理しているマスタデータをリアルタイムに取得/同期し、コンテンツ配信の最適化を完全自動で実現するマーケティングオートメーションサービスである。

事業プロデュースはクライアント企業の個別具体的な課題に対して支援を行う。
新規事業開発がうまくいかない、立ち上げ後に成長していかないなどのよくある課題に対して、伴走しながら事業を成功に導いている。

事業形態からすると、エンジニアは少なそうに思えるかもしれないが、実は社員の半分以上がエンジニアやデザイナーだそうだ。
「事業企画とか戦略立案のご支援をするだけでなく、実際にアイデアを形にしていく、事業を形にしていくというところまでサポートしています。」(大西氏)

この「形にしていく」部分、システム開発の支援でもRubyが使われることもある。
事業の内容は顧客によって様々であるため、エンジニアは自社サービスの他にも様々なドメイン、サービスなどを経験することができる。

地方への積極的な進出

Relicは今年9月、6番目の地方拠点として「松江イノベーションスクエア」を設立した。
事業共創カンパニーのRelic、中国地方のイノベーター人材発掘・育成とイノベーション創出に向け、島根県松江市に「松江イノベーションスクエア」を設立

Relicは地方へ積極的に進出しており、これまでにも福岡市の「Fukuoka Incubation Studio」、和歌山市の「和歌山イノベーションラボ」、和歌山県白浜町の「Growth Studio @Shirahama」、富山市の「富山ディベロップメントベース」を設立している。
ここに新たに松江イノベーションスクエアが加わった。

〈 Relicの拠点 〉

松江に進出した経緯について伺ってみた。

「松江に拠点を作った理由としては、一番は島根県や松江市がRubyを起点にしたエンジニア教育にとても力を入れているというところです。
我々も優秀なエンジニアの方々を採用させていただいて、一緒に良いプロダクト、システム開発を行っていきたいと考えております。
エンジニアの方々が育つ土壌が既にできている松江市さんに拠点進出することで、より我々が描いているゴールの達成に向けて一緒に進んでいけると思いました。」(大西氏)

「拠点で新しいエンジニアの発掘もやっていきたいというのもあります。
松江はやはりRubyのゆかりの地でもあるので、Rubyのゆかりの地で働きたい方や、もしくはその松江やその周辺の県でRubyを使って仕事したいという方がいればこの拠点で働いて、というような様々な働き方の受け口になっていきたいです。」(佐々木氏)

では、拠点の進出先はどのような基準で選んでいるのだろうか?

「システム開発の拠点であれば、その地域に優秀なエンジニアの方々がたくさんいるかどうか、育つ環境があるか、といった点を重視しています。
あとはやはり地域と一緒に育っていきたいので、地元の学生さんたちがどの程度その地域で働きたいと思っているのか、採用面で競合となるIT企業がどれくらい進出しているのか、県や市の支援や熱量なども考慮しながら進出先を選定しています。」(大西氏)

実際、富山拠点にいるメンバーには北陸出身のメンバーがいるそうだ。

離れているからこそ、コミュニケーションにこだわる

拠点はアサインされているプロジェクトに関係なく、自身で選ぶことができる。
そのため、プロジェクトメンバーが複数の拠点にまたがっていることもある。
複数拠点に分散しているメンバーと仕事する上で工夫していることはあるのだろうか?

「コミュニケーションを積極的に取れる環境づくりをしています。
新規事業は、これまでにないものを作るという特性上、細かいコミュニケーションを積極的にやってこそ良いものが作れます。
例えばレクリエーション委員会というのがあり、今日もオンラインでハロウィーンパーティーがあります。」(佐々木氏)
このように、業務に関するやりとり以外にも、エンジニア同士でコミュニケーションを活発にとれる場を設けているそうだ。

他にも、1on1の制度を設け、メンターが週に一回メンティーの悩みを聞いたり、時には開発に関する相談をできる場を設けている。
佐々木氏は声をかけてもらえるように様々な工夫をしているそうである。

「例えば、リアルに隣にいた場合、その人が集中しているか、話しかけても大丈夫そうかわかるので、パッと声かけやすかったりします。
リモートだと忙しそうかどうか分かりづらく、声をかけづらいところはあると思います。
他にも、オフィスにいる場合は上司でも暇そうだから声をかけようかとなりますが、オンラインでは『今が暇そうだから声をかけるタイミングだ』ということを伝えるのが難しいことは課題としてあります。
そこはやはり積極的にコミュニケーションを取ることで解決しようとしています。

リモートでもペアプログラミングができるツールを使ってペアプログラミングをしているメンバーもいます。
Slackのハドルを活用し、まるで隣にいるような感覚でちょっと声をかけて、小さいミーティングをしてみたりもしています。」(佐々木氏)

〈 横山氏(向かって左)と佐々木氏(向かって右) 〉

部活動とレビュー会でコードレビュー要員不足を解消

Relicではコードレビューを重視している一方、エンジニアの少ないプロジェクトではコードレビューの人員が足らないケースが発生するという悩みを抱えているという。
この課題を解決するための活動として、部活動でのコードレビューやレビュー会がある。
これらでプロジェクトを横断して協力する環境を作っているのだそうだ。

「弊社では様々なプロジェクトがあります。
例えば自社サービスだけでも大きく分けて3つあります。
加えて、クライアントワーク。こちらもRubyではないケースもありますが、プロジェクトがたくさんある状態です。
ただしチームメンバーは限られているので、自分の属しているプロジェクトにとらわれず、すべてのサービスを見れるようにしようというところがあります。
プロジェクトの中身もそうですし、技術的にも知識共有をしたい思いがあります。

レビュー会では、プロジェクト横断的なコードレビューを実施することによるナレッジの共有であったり、どんなプロジェクトがあるのかをみんなに知ってもらうとか、レビューアーの育成を期待しています。
一方、部活の方では、部員主導で、レビューアー不足のプロジェクトのレビューを支援していくような形をとっています。」(佐々木氏)

レビュー会は週に1回を目標に実施しているが、Ruby部のコードレビューは毎日のように継続的に実施しているのだそうだ。

Ruby部の活動

Ruby部ではRubyの最新情報などを部活のSlackのチャンネルで共有したり、所属しているプロジェクトにこだわらず質問したり相談に乗ったりもしている。

特に人数の少ないプロジェクトでは、いつも同じメンバーでやっていて本当に良いコードレビューができているのかという懸念がある。
例えば重要なコードについて、他の人にも見てもらいたい場合など、レビュー会だけでは消化できないものをRuby部メンバーで見ていたりもするそうだ。

レビュー会

「参加は任意で、所属するプロジェクトや業務で使用している言語によらず、みんなでレビューをしています。
レビューアーを育てる目的に加えて、そのプロジェクトのプルリクのレビューも消化するという回もあります。

例えば、我々はバックエンドエンジニアがいるグループですが、そのグループで週に1回定例あり、そこで『今回はThrottleのプルリクをレビューしますので皆さん集まってください、よろしくお願いしまーす』といった感じでアナウンスをして実施していきます。」(佐々木氏)

横山氏の場合は、時間があれば出るようにしているそうだ。
「任意ですが、他の皆さんも、何かと集まってくださっています。
私自身のプロダクトでもレビュー人員不足になることがあり、とても助かっています。」(横山氏)

レビュー会に出す課題はどういう基準で選んでいるのか伺ってみた。

「さきほど佐々木が言ったように、案件のレビューを消化したいことと、レビュー人員を育てたいことの2つの目的があります。
レビュー人員が足らなくて残っているプルリクをこの機会を使って消化したいという時と、レビューの題材に向いていると思って提供するケースです。」(横山氏)

「設計とか、書き方といった観点でレビューアーの成長を促せるものがあるので、そういったものをテーマとして選んでいます。」(佐々木氏)

レビューできる人を育てるにあたり、どんなことに気をつけてるかについては以下のように答えてくれた。

「一つはやはり数をこなすというのは大事なところかと思います。
あとはどうしてもその一つのチームとか、いつもの限られたメンバーだけではレビューの観点はやはり限られてくるので、できるだけ多様性を持たせたメンバーで、いろんな視点でレビューをするというのは大事かなと思ってます。」(佐々木氏)

確かにワークショップなどで同じ課題を毎回異なるメンバーで実施した場合、毎回同じようなコメントもあるが、一方で必ずと言ってよいほど毎回初めて聞く指摘があったりする。
少ない人数で開発しながら、できるだけ多くの視点を取り入れたレビューを実施するための工夫をしているように感じられた。

「Ruby部では部活のメンバーのみがレビューしますが、レビュー会では部活に所属していない人も参加して、さらに広い目で見ることができるというところが一つ利点でもあり、重要なポイントだと思います。」(佐々木氏)

松江イノベーションスクエアでは地元と共に成長していきたい

「松江市も今、IT企業の誘致にとても力を入れていると感じています。
松江で育ったエンジニアの方々が就職の段階になると広島や福岡、大阪、東京など都市部に出てしまっているところがあり、地元での就職先が少ないことを課題として事前に伺っていました。
そういった地元で働きたい、地元に貢献したいエンジニアの方々に松江イノベーションスクエアを選んでいただけたらと思っております。
弊社も若い会社ですし、今まさに成長している会社ですので、一緒に成長していきたいという気持ちがとても大きいです。
最初から完璧な技術や知識を持っている人も少ないでしょうし、我々自身も日々新しい技術などを学びながらチャレンジして、たまには失敗して成長していっているというところもあります。
ですので、なんか東京からIT企業来たぞっていう形で身構えるのではなくて、どんな会社かなという気持ちでまずは見に来ていただけたらすごく嬉しいなと思っています。」(大西氏)

もちろん松江以外の拠点でも同じ思いでメンバーを募集している。
ご興味を持っていただけた方は是非採用ページ(https://relic.co.jp/recruit/)をご覧いただきたい。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2022年10月)のものであり、現在変更されている可能性があります。