株式会社マネーフォワード

人が成長できる環境でサービスも成長させていきたい

Ruby bizグランプリ2022で特別賞を受賞した株式会社マネーフォワードの「マネーフォワード Pay for Business」について、福岡拠点に所属するPay事業本部 副本部長の市川 智貴氏にお話を伺った。

マネーフォワード Pay for Businessについて

マネーフォワードは、大きく分けて、法人向けサービス、個人向けサービス、金融機関向けサービスを提供している。
個人向けサービスの「マネーフォワード ME」がよく知られているが、ビジネスの中核となっているのは法人・個人事業主向けの「マネーフォワード クラウド」と呼ばれる、会計をはじめとするバックオフィス全般のサービスだそうだ。
「マネーフォワード Pay for Business」は、SaaS基盤を活用したFintechサービスだ。
事業者ごとのウォレットから、出張旅費などの経費や、会社の購買などの支払いを行うことができる。
決済手段として、ウォレット残高からカード支払ができる事業用プリペイドカード『マネーフォワード ビジネスカード』を提供している。
ウォレットに入金された範囲で利用可能だが、「あと払い機能」も有しており、独自の与信審査ロジックにより、事前チャージ不要で決済可能である。

〈 マネーフォワード Pay for Business 〉

スタートアップ起業時におけるクレジットカードの課題

自社サービスの運用にAWSなど海外サービスを積極的に利用されるようになったこともあり、支払い方法が請求書払いからカード払い主体になってきた。
それに伴い、新規事業者が与信の問題でクレジットカードを作れなかったり、限度額が低すぎて支払いに使えず、事業に支障が出るという課題が発生している。

経費精算の手間をなくす

例えば出張旅費など、従業員が現金を扱うケースは多い。
従業員側で立替える場合でも、頻繁に出張するケースや、月〜金まで東京滞在という場合など、立替え額が高額になることもある。
仮払いする場合でも、急な出張で間に合わなかったり、予定の変更などで仮払い額では足りなかったりすることもある。

経理側でも現金を用意する手間が省ける。
クレジットカードなどキャッシュレス決済を利用することにより、利用状況がリアルタイムに連携され、会計処理を自動化できる。
マネーフォワード クラウド経費で申請された情報と連動させることによって、更に処理をスムーズにすることができる。

「チャージした範囲内で自由に使えて、高額決済ができる、そんなカードがあれば解決できると認識していて、このサービスを作っています。
会計ソフトや経費精算システムはマネーフォワード クラウドのラインナップの中に全てあります。
それらと共にマネーフォワード ビジネスカードを使うと、経費精算から決済、会計仕訳まで一気通貫してバックオフィスのオペレーションが完了します。
ですので、マネーフォワード ビジネスカードを単体で使っていただくよりは、クラウド経費やクラウド会計と一緒に使っていただくことで、より多くの価値を提供できます。」(市川氏)

〈 市川氏 〉

Rubyの選定理由

「福岡拠点にはRubyエンジニアが多く所属しています。
マネーフォワード Pay for Businessでは他のサービスとの連携も多く、短期間での開発が求められています。
そこでRuby on Rails(以下Rails)という成熟したフレームワークを活用しています。
Railsはいろいろなライブラリも揃っていて、それらを利用して短時間での開発を実現しています。
マネーフォワードPay for Businessには複雑なロジックもありますが、Gemを活用することにより実現しています。
RubyやRubyコミュニテイが提供しているエコシステムに乗ることで、迅速なリリースが実現できるので、Rubyを使っています。」(市川氏)

この分野には競合他社も多く、動きが早いところもある。
新機能をスピード感を持って開発していくことも重要なのだそうだ。

Rubyのイベントを社内交流にも活用

マネーフォワードはRubyKaigi 2023ではPlatinum Sponsorsとして協賛や社員の登壇の他、企業ブースを設けた。

RubyKaigiやRubyWorld Conferenceなどの大規模イベントでは、国内外から多くのRubyistが集まり、普段会えない人と直接話できることに意義を感じている人は多い。
また、社外の人に限らず、社内でも、従業員数が多かったり、遠方の拠点など、会ったことがない人がいるケースは多い。
マネーフォワードでは、基本的に開発チームは拠点ごとに編成されており、拠点をまたがって一緒に仕事をする機会は部署にもよるが、多くはない。
大規模カンファレンスへの参加は社外のRubyistとの交流だけでなく、社内の他拠点のエンジニアとのコミュニケーションの場としても役立っているそうだ。

企業ブースでは、各拠点から集まった社員たちが一緒になって企画を考えた。
今回の企画ではじめて話をして一緒に作業したメンバーもいたそうである。

「同じ言語を使っていて、同じ会社にいても、プロダクトが違うとほとんど話したことがない人もいます。
そういう人といろいろ話せたのはよかったと思います。」(市川氏)

市川氏はブースコンテンツの一部であったコードレビュー会の企画に参加し、1日目の問題作成を担当した。

コードレビューに使用したコードとレビューコメントの一部をブログで紹介している。
https://moneyforward-dev.jp/entry/2023/06/14/rubykaigi2023-booth

「コードレビュー企画は、いろんな人にコードを読んでもらって感想や指摘をコメントしてもらうというものなのですが、結構評判がよかったです。」(市川氏)

このように、イベントスポンサーをすることが、コミュニティへの貢献、社外へのアピールだけでなく、社内でのコミュニケーションにも役立っている。

もちろん、拠点間の交流がまったくないわけではなく、月に1回1時間程度オンラインで社内勉強会を実施するなどしている。
他にも読書会や勉強会などを有志が企画して開催したりもしている。

〈 RubyKaigiの展示、コードレビュー会 〉

インターンから入社してサービスを手掛けるまで

福岡拠点では継続的にインターンを実施しており、インターンから入社に至ることもよくあるそうだ。
実際、市川氏は福岡拠点のインターン生から社員になった第一号である。
そこで、インターンから入社することの利点、経緯などを伺ってみた。

「福岡拠点は東京に比べると小さい拠点ですが、インターンから内定に至るケースは多いです。
その成功体験もあって、継続的にインターンを採用し続けています。」(市川氏)

市川氏はインターンから入社したそうだが、インターンから入ったメリットはどんなところにあったのだろうか。

「インターン時に社内の雰囲気がわかります。
また、プロダクトの理解が深まったこともあげられます。」(市川氏)

インターン時は経費精算システムである マネーフォワード クラウド経費の開発に関わったが、学生にとって企業で行われている経費精算は馴染みがなく、最初はイメージしづらかったようだ。
しかし、実際に業務に関わっていく上でサービスの内容についての理解も深まり、これからも関わっていきたいサービスだと思えたそうである。

最初はイメージしづらかったサービスを提供している会社に興味を持ったきっかけは、何だったのだろうか。

「自分の生活に密に関わりのあるサービスに関心がありました。
マネーフォワードの大きなテーマはお金です。
お金は必ずどこかで触れているものなので、自分の生活に繋がっているものに関わりたいという要望にも合っていました。
また、偶然社内に知り合いがいて、会社のことを知っていたというのもあります。」(市川氏)

インターンを始めた時には入社しようと思っていなかったそうだ。
インターンをしているうちに入社したいと思うようになったきっかけは何だったのだろうか。

「開発を通じて、そのプロダクトやマネーフォワード全体のことを知ったというのは大きいです。
また、学生の時からずっとRubyが好きで、Rubyで開発していたということもあります。
エンジニアとしても成長できる環境でしたし、それ以外でも成長できる環境がありました。
実際、マネーフォワードPay for Businessの一番最初の立ち上げに関わらせてもらい、今はチームのマネジメントもしています。
そういった様々な側面で成長の機会をくれる会社というのは当時から感じていました。」(市川氏)

〈 福岡拠点のマネーフォワードPay for Businessの開発チームのみなさん 〉

学生時代からイベントに参加していた

市川氏は、学生時代からよくRubyのイベントに参加していたそうである。
どんな目的で参加し、どんな収穫があったのだろうか。

「RubyKaigiやRails Developers Meetupなどに参加していました。
マネーフォワードでインターンをはじめる前も、スタートアップでRailsを使ったアルバイトをしていました。
アルバイトを通して、社内以外からも、もっと新しいRubyの情報を仕入れたいと思うようになり、東京で開催される大規模なイベントに参加していました。」(市川氏)

〈 過去に参加したRails Developers Meetup 2019 〉

Rubyコミュニティが好き

「(Rubyは)書き心地がいいですし、常に進化し続けていて技術的にも素晴らしいのはもちろん、コミュニティも素晴らしいところが好きな理由の一つです。
日本で作られている言語なので、イベントに行けばMatzやコミッターの方々に会えて話を聞けたり、Rubyコミュニティならではのワイワイとした雰囲気に触れてきたからRubyを好きになったので、今もイベントには積極的に参加しています。」(市川氏)

これからもRubyコミュニティに貢献していきたい

「学生時代は、コミュニティに参加する側だけでしたが、今ではマネーフォワードとしてスポンサーをしたり、フクオカRuby 大賞にも関われて、コミュニティに還元できるようになりました。
また個人としても、コミュニティを盛り上げる活動には意識をして参加しています。
私がRubyが好きになったきっかけがコミュニティなので、コミュニティに恩返しするために、引き続き会社としてやれること、個人としてやれることがいろいろあると思うので、積極的に関わっていきたいと考えています。」(市川氏)

※本事例に記載の内容は取材日時点(2023年7月)のものであり、現在変更されている可能性があります。