ファインディ株式会社

開発組織の課題を可視化 エンジニアがもっとかがやける環境をつくる
エンジニア組織向けの開発生産性可視化ツール「Findy Team+」。そのサービス開発背景について、ファインディ株式会社のエンジニアリーダーである浜田 直人氏にお話を伺った。

エンジニアの挑戦をサポート
ファインディ株式会社は、経営理念に「つくる人がもっとかがやけば、世界はきっと豊かになる」を掲げ、エンジニアの挑戦をサポートするプラットフォーム構築・運営を手掛けている。創業当初からハイスキルなエンジニアと企業のマッチングサービスや、フリーランスエンジニア紹介サービスを提供してきた。現在はエンジニア組織向けの開発生産性可視化ツール「Findy Team+」などのSaaSプロダクトや、開発ツールに特化したレビューサイト「Findy Tools」、エンジニア向けのイベント開催やWebメディア運営も行っている。単なる人材紹介やマッチング、HRサービスにとどまらないプラットフォームの運営は、国内ではまだ競合プレイヤーが存在していないという。

浜田氏は、同社エンジニアチームのリーダーを務めている。2年前にジョインし、ソフトウェアエンジニアとして「Findy Team+」の開発を担当してきた。「Findy Team+」の特徴やターゲットについて、浜田氏は次のように紹介する。
「『Findy Team+』はエンジニア組織を支援するSaaSで、開発組織の生産性を可視化して改善することを目的としたプロダクトです。おもに開発部門を持つ企業がターゲットで、組織規模の大小を問わず導入していただいています。製品のローンチ初期は小規模なスタートアップに導入いただくことが多かったですが、近年では大規模な開発組織への導入も進んでいる状況です。なお、大企業と小規模な企業では開発組織が抱えている課題が異なるため、それぞれの企業にヒアリングを行い、プロダクトの改良に日々取り組んでいます」
開発組織が抱えがちな課題
「大企業と小規模な企業では開発組織が抱える課題に違いがある」と指摘した浜田氏。さらに詳しく尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。
「課題は、企業内におけるポジションや個々のロールによって詳細に分かれるため、深掘りが必要です。経営層、エンジニアリングマネージャー、そして個々のエンジニアという3つの観点から、直面しがちな課題を紹介します」
エンジニアリングマネージャーの立場で抱えがちな課題
「エンジニアリングマネージャーのおもな目的は、プロダクト開発を通じて事業に貢献することです。
機能開発だけでなく、技術的負債の解消やリファクタリングなどの取り組みも重要ですが、その成果をエンジニア以外に説明するのが難しい、という問題があります。
また、組織規模が大きくなると個々のメンバーのパフォーマンス把握が難しくなるという課題も想定されます。
そこで『Findy Team+』を活用することで定量的にパフォーマンスを把握しやすくなり、ボトルネックの特定・解消による開発パフォーマンス向上まで可視化して容易に管理できるようになります」
経営層の立場で抱えがちな課題
「経営層は、開発組織に対して意思決定を行う必要がありますが、エンジニア出身ではないケースも多く見られます。よって、開発組織のパフォーマンスを定量的に把握することが難しく、事業KPIへの反映も即時ではないことが課題です。
そこで、『Findy Team+』を活用して『Four Keys(Googleが提唱する、開発チームのパフォーマンスを示す指標)』などの開発生産性指標を可視化することで、開発組織のパフォーマンスを定量化できます。
定量的な指標をもとに開発組織の状態を把握し、投資判断などの意思決定に役立てることが可能になります」
個々のエンジニアの立場で抱えがちな課題
「チームでのプロダクト開発では、個々のエンジニアの貢献が定量的に把握しづらい課題があります。
そこで、『Findy Team+』を活用することで、メンバー一人ひとりのパフォーマンスを可視化できるようになります。
個々の成果を定量的に把握することで、目標設定や上長との擦り合わせに役立ちます。定量的な数値は、自身の活動を振り返る際にも精度高く分析するためにも重要です」
開発生産性の可視化・向上を実現
開発チームのパフォーマンスの可視化・向上に役立つ「Findy Team+」。製品の独自性についても詳しく尋ねた。
「GitHubやJiraなどのツールと連携し、開発パフォーマンスを定量的に可視化することができます。毎日データを収集し、翌日にはダッシュボードで確認できる仕組みが整っています。エンジニアに限らずビジネスサイドのメンバーも、開発に関連するアクティビティを簡単に可視化できるようになり、チームの生産性を把握しやすくなります。従来は、経営層が開発組織の成果やパフォーマンスを把握できずにいるという課題がありましたが、可視化ができることでその課題の解消に貢献します。
なお、『Findy Team+』のプロダクト開発においては技術スタックとして主にRubyを使用しており、データの取り込みや、ダッシュボード表示用のデータ加工などはすべてRubyで行っています」
Rubyを採用した理由について、さらに詳しく聞いた。
「Ruby採用の理由として、意図通りに気持ちよくコーディングができること、開発スピードの速さ、コスト削減効果、大規模サービスの運用実績、ライブラリやコミュニティの活用しやすさが挙げられます。
Rubyの豊富なライブラリ(gem)を活用することで、管理画面をほぼノーコードで実装できるため、工数を大幅に削減することができました。
『Findy Team+』では管理画面以外にも、マルチテナント(利用企業ごとにデータを分離できる)機能や、認証・認可の仕組み、データを取り込むための非同期処理などもgemを利用して迅速に開発できました。
gemをインストールするだけで、機能の根幹部分をこちらで開発することなくスピーディーに進められますし、幅広い企業様で使用実績があるため、品質面でも安心して使うことができる点もメリットだと感じています」
さらに、Rubyを採用するメリットについてもう一点、「大規模サービスの経験豊かなエンジニアを採用できる観点もある」と浜田氏は続ける。
「やはりビジネスをスケールさせていくためには、ビジネスサイドだけではなく、開発チーム自体の拡大も不可欠だと考えています。
Rubyは現時点で大小さまざまな規模の事業会社で採用されていたり、また、プログラミングスクールなどでエンジニアを育てる場でも採用されていることが多いといえます。
ジュニアからシニアなエンジニアまで、幅広いRubyエンジニアが世の中にいると思っています。『人材採用』という観点で言うと、エンジニア母数が大きいというのがとても有利に働くと思っているので、そこがやはりRubyの非常に大きなメリットだと感じています」
エンジニア組織の開発パフォーマンスを高く維持するコツ
「開発チームを拡大させていこう」という会社の方針もあり、同社のエンジニアチームは現在、20名弱まで成長しているという。開発組織が拡大してもパフォーマンスが落ちない組織設計、属人化したプロセスの仕組み化、メンバー育成など、マネジメントの役割も担う浜田氏。エンジニア組織そのものの開発パフォーマンスを高く維持するためのコツを尋ねた。
「ビジネスサイドとエンジニアサイドの互いの協力が事業成功のために不可欠で、特にファインディでは創業時からエンジニア向けのサービスを展開してきた背景もあり、ビジネス側のエンジニア理解度が高いという前提があり、エンジニアとしてとても働きやすい環境だと感じています。
しかし、逆方向も重要です。
すなわち、プロダクトマネージャーがビジネスサイドとエンジニアサイドの重要な橋渡し役となり、なおかつ、エンジニア自身がビジネスサイドの考えを理解することも不可欠です。
このような考えから、開発チームは“社内受託”のような関係ではなく、事業推進のために必要な開発を理解して進める体制を整えるよう努めています。たとえばエンジニアが商談や、製品ユーザーとのミーティングに参加することで、事業理解を深める取り組みも進めています」
Ruby biz グランプリ2023 ソーシャルインパクト賞を受賞
ここまで語られてきた同社のプロダクト『Findy Team+』は、「2023年 Ruby biz グランプリ ソーシャルインパクト賞」を受賞した。受賞に関して開発のリーダーとして感じている想いをお聞きした。
「受賞は率直に嬉しく、プロダクトが世の中にインパクトを与えていることを実感しました。『開発生産性』というキーワードは2022年まであまり注目されていませんでしたが、 『Four Keys』という指標の流行によって、認知度が向上しました。『Four Keys』の登場で、開発生産性向上のための指標や考え方が変わり、エンジニア体験を重視する方向にシフトしてきたと捉えています」

エンジニア組織の開発生産性指標を基にした「Findy Team+ Award」も主催
同社は、エンジニア組織の開発生産性指標を基にした「Findy Team+ Award」という式典も主催している。その取り組み概要や、成果について尋ねた。
「『Findy Team+ Award』は、開発生産性を高める優れた取り組みを称える式典で、今年で3回目の開催を予定しています。『Findy Team+』ユーザー企業の開発生産性スコアを算出し、企業間の相対的な開発パフォーマンスを比較することで、モチベーション向上に寄与しています。
最近では、高い開発者体験や開発生産性を持つ組織にエンジニアが集まる傾向が見られ、そのためのブランディングや広報活動が重要視されています。
よってこのアワードは、自社の開発生産性や開発者体験をアピールする機会として活用されることが期待されています」

今後の展望
最後に、今後の事業拡大の方向性に関してお伺いしたところ、『Findy Team+』というプロダクトとして、そしてファインディ株式会社としての2軸で語ってくれた。
『Findy Team+』プロダクトの今後
「開発組織の開発者体験と生産性向上をサポートする方針には、引き続き取り組んでいきます。
アジャイル開発やDevOpsなどの新しい考え方が過去に開発プロセスにイノベーションをもたらしたように、AI技術の進化が今後の開発プロセスに大きな影響を与える可能性があるとも考えています。
『Findy Team+』は最先端のテクノロジーを活用し、次世代の高い開発者体験を提供することを目指しています。
また、日本だけではなく世界共通の課題として開発生産性を捉えているため、今年からインドに進出して営業基盤を構築中です。インドを皮切りに海外展開も視野に入れ、グローバルで使用されるプロダクトへの成長を目指しています」
ファインディ株式会社としての今後
「ファインディ株式会社はエンジニアのプラットフォームをつくることをミッションとしていますが、解決すべき課題はまだ多く残っていると認識しています。
今年1月には『Findy Tools』という開発ツールに特化したレビューサイトをローンチしたばかりなので、今後も既存の事業をより良くしていきつつ、新たに課題をサポートできるようなサービスも並行してどんどん展開していくことで、すべてのエンジニアが不安なく挑戦できる世の中に近づけていけるよう、これからも活動していきたいと考えています」
※本事例に記載の内容は取材日時点(2024年8月)のものであり、現在変更されている可能性があります。
事例概要
- 会社名
- ファインディ株式会社
- 開発した主なシステム
- Findy Team+
- 利用技術
- Ruby on Rails
- RSpec
- React
- TypeScript
- AWS
- ニーズおよび解決したかったこと
- 開発プロセス改善
- 文化づくり・自己組織化
- 事業スピード加速
- 開発組織ブランディング
- Ruby採用理由
- 開発速度の速さと運用コスト低減
- 大規模サービスでの運用事例が多数ある
- 言語や主要ライブラリーのアップデートやコミュニティーが活発
- 豊富なライブラリ(gem)
- Ruby採用効果
- 開発者の意図通りに気持ちよくコーディングができる
- 豊富なライブラリ(gem)
- 優秀なエンジニアを採用できる