株式会社IVRy

電話業務をもっと人に寄り添うものへ。Rubyとともに進化する、対話型音声AI SaaS『アイブリー』

「電話が鳴り続けて、仕事が進まない」「本当に大切な電話を取り逃してしまう」。
多くの事業者が抱えるこうした悩みに、テクノロジーの力で真正面から向き合っているのが、対話型音声AI SaaS『アイブリー』を提供する株式会社IVRyだ。

電話という、古くからあるコミュニケーション手段を、AIとSaaSの力で再発明する。
同社のプロダクトは、飲食店や医療機関、宿泊施設など、業種・規模を問わず広がりを見せている。
その裏側には、スピード感あるプロダクト開発を支えるRubyの存在がある。

今回は、株式会社IVRy Engineering Managerの堀田裕理氏に、事業の背景からプロダクト開発、そしてRubyが果たしている役割までを聞いた。

〈 株式会社IVRy Engineering Manager 堀田 裕理 〉

京都大学大学院情報学研究科修了。2015年に新卒で株式会社リクルートホールディングス(現 株式会社リクルート)に入社し、ソフトウェアエンジニアとして海外向けSaaSやCGMの新規立ち上げ、『ホットペッパービューティー』のシステム刷新等を歴任。2020年からは『ホットペッパーグルメ』を始めとする飲食事業の開発統括・Engineer Leadとして開発組織のマネジメント・ディレクションを担当。2022年より株式会社IVRyへ入社。ソフトウェアエンジニア・エンジニアリングマネージャとしてIVRyのプロダクト開発やエンジニア組織作りに携わる。

事業化のキッカケは銀行融資の失敗から

IVRyは「最高の技術を、すべての人と企業に届ける」というミッションを掲げるスタートアップだ。
ここでいう“最高の技術”とは、単に新しいだけのものではない。驚きがありながらも、日常に自然に溶け込み、人の生活や仕事に寄り添うテクノロジーである。

創業当初から、特定のプロダクトありきで会社を立ち上げたわけではなかったという。
社会を良くする事業をつくるため、複数の事業開発に挑戦し、その中で7つ目として生まれたのが対話型音声AI SaaS『アイブリー』だった。

事業の原点には、代表自身の原体験があるという。

堀田氏「会社の代表電話番号を個人の携帯番号にしていた時期があって、営業電話に埋もれてしまい、本当に重要な連絡を逃してしまったことがありました。銀行融資の本人確認の電話だったんですが、それに出られず融資が通らなかったんです。」

手痛い失敗は、「電話というコミュニケーションの構造そのものに課題があるのではないか」という気づきにつながった。

重要な電話は全体のごく一部。でも、それを逃してしまうことは大きなリスクである。
この課題意識が、『アイブリー』の原点となっている。

人の手を解放し、仕事を前に進める。対話型音声AI SaaS『アイブリー』

IVRyが提供する『アイブリー』は、AIが電話応対を担う対話型音声AI SaaSだ。
従来のIVR(自動音声応答)は、個別開発が前提で、導入コストや運用負荷が高いものだった。
『アイブリー』は、それをSaaSとして提供することで、誰でも、低コストで、すぐに使える形にした点が大きな特徴だ。

堀田氏「『アイブリー』は、電話対応そのものを置き換えるというより、人が本来やるべき仕事に集中できる状態をつくるプロダクトだと思っています。」

単に「1番を押してください」といった振り分けにとどまらず、音声認識によって用件を理解し、予約管理システムや外部APIと連携することもできる。
AIが一次対応を担い、必要に応じて人に引き継ぐ。業務オペレーションに合わせた柔軟な設計が可能だ。

興味深いのは、プロダクト初期のエピソード。
立ち上げ当初、『アイブリー』には管理画面すら存在せず、設定はGoogleスプレッドシートで行っていたという。

堀田氏「今振り返ると、かなり荒削りでした。でもβ版に近い状態で公開したら、“明日から使いたい”という声をたくさんいただいて。これは本当にニーズがあると確信しました。」

『アイブリー』に至るまでに挑戦した他の事業と比べても、反応の熱量が明らかに違っていたという。

現在、アイブリーは業種を問わず幅広い事業者に導入されている。
飲食、医療、宿泊、コールセンター、バックオフィス等、電話業務が存在するあらゆる現場で活用が進む。

ユーザーから寄せられる声は、極めて実務的だ。
「アイブリーがないと仕事が回らない」「電話対応に追われず、お昼休みが取れるようになった」。こうした言葉は、開発・営業・サポートを含む社内全体の大きな支えになっている。

印象的なのは、単なる業務効率化にとどまらない点だ。
「電話対応をきっかけにDXが進んだ」「カスタマーハラスメント対策につながった」「電話データを分析して経営改善に活かしている」。

電話という“ブラックボックス”だった領域が、データとして可視化され、次の意思決定につながっている。

さらに、コロナ禍でのワクチン接種予約や旅行支援制度など、社会的要因によって電話が集中する場面でも、『アイブリー』は現場を支えてきた。
「電話が鳴り続けても、必ず応答される」。その安心感は、事業者だけでなく、電話をかける側にとっても大きな価値となっている。

電話が“つながって当たり前”であるがゆえの難しさと正面から向き合い、24時間365日止まらないサービスを支える経験は、プロダクトを大きく育てることになった。

「早く作って、検証し、次に進む」──IVRyがRubyを選び続ける理由

『アイブリー』の開発基盤として選ばれているのが、RubyとRuby on Railsだ。
その理由は、技術的な流行ではなく、新規事業の現実に根ざしている。

堀田氏「『アイブリー』を始める前から、Webサービス開発の王道の1つであるRubyを選択してきました。事業を立ち上げていく時には、早く作って、検証し、次に進む。そのサイクルをいかに早く回せるかが重要です。」

新規事業において最大のリソースは「時間」だ。
ビジネスロジックに集中でき、余計な技術的負債を抱えずに済む。Rubyは、やるべき課題にエネルギーを集中させてくれる言語だったという。

また、Rubyの設計哲学である「enjoy programming」が、IVRyのビジョン「Making "Work is Fun" a reality.(“働くことは、楽しい”を常識に変えていく)」と親和性が高かったことも選定理由の一つだった。

コミュニティやカンファレンスが活発で、情報発信と人材流入の好循環が生まれている点も、大きな強みだ。

堀田氏「Rubyは長年、実践的なWebサービスを支えてきた言語です。その蓄積があるからこそ、AIのような新しい領域でも、安心して挑戦できると思っています。」

音声AIや外部API連携といった複雑な領域においても、Rubyは柔軟性を発揮している。
大量のコミュニケーションデータを安定して処理しつつ、仕様変更や実装の見直しにも耐えられる。
AIの進化に合わせて大胆に実装を捨てる判断ができるのも、コードの可読性とシンプルさがあってこそだ。

Ruby biz Grand prix 2025受賞について

IVRyは「Ruby biz Grand prix 2025」で「AI×Ruby賞」を受賞した。
堀田氏は、この受賞を「Rubyとともに積み上げてきた取り組みが認められた結果」と受け止めている。

評価されたのは、AIという先端技術を、現場で本当に使われるプロダクトに落とし込んでいる点だろう。
AIそのものを研究するのではなく、既存の業務フローに自然に組み込み、価値として届ける。そのためのプロダクト開発力が、高く評価された。

受賞後は、社内の士気向上だけでなく、社外からの認知や採用面での反響もあった。Rubyコミュニティを通じてIVRyを知り、「あの会社で働いてみたい」と思い出してもらえる。その積み重ねが、次の成長につながっている。

Rubyとともに、働くをもっと楽しく。IVRyのこれからとエンジニアへのメッセージ

IVRyは、電話という領域にとどまらず、ビジネスコミュニケーションに関する大きな価値提供をするプロダクトづくりを見据えている。
複数プロダクトの展開や、より高度なAI活用を見据えながらも、軸にあるのは現場への寄り添いだ。

AIの進化は速い。だからこそ、過去の実装に固執せず、柔軟に作り替えられる開発体制が重要になる。
RubyとRailsを基盤に、変化を前提としたプロダクトづくりを続けていく考えだ。

最後に、Rubyエンジニア、そしてこれからRubyを学ぼうとする人たちへのメッセージを聞いた。

堀田氏「AIがコードを書いてくれる時代になりつつありますが、コードを読む量は逆に増えています。だからこそ、冗長な表現が少なく、処理や意図を明確に表現しやすいRubyの良さを実感しています。何をしようとしたプログラムなのか、人もAIも理解しやすいRubyは、すごくいい言語なので、今後もRubyに携わる人がどんどん増えていくといいなと思っています。AIや音声のような新しい領域でも、Rubyエンジニアは十分に戦えるので、ぜひ、新しい挑戦をしてほしいですね。」

電話という社会インフラを、より人に寄り添うものへ。
Rubyを武器に、IVRyの挑戦はこれからも続いていく。

※本事例に記載の内容は取材日時点(2025年12月)のものであり、現在変更されている可能性があります。