■長期的継続プロジェクトと子育ての関係

まつもと なかださんのところは、ちっちゃなお子さんがいて大変だろうけど頑張ってるよね。なかださんにHerokuに加入してもらって、今はフルタイムでRubyを開発してもらっているんだけど、加入前から全然ペースが変わらないんだよね。

近永氏あまり変わっていない気がしますね。

まつもと そういえば、なかださんのところもちっちゃなお子さんがいるけど、近永さんのところも「ruby-trunk-changes」を始めたときは特にちっちゃかったというか、まだ生まれる前だったかな?

近永氏 いえ、子どもが生まれた後に始めました。2011年のRuby Kaigiのときは、まだ新生児だった子どもが体調を崩していて、会場には行けなかったんです。さっき話したコミッタの質疑応答コーナーは、後日Ustreamで見たんです。

まつもと 近永さんのブログやツイッターを見る限りだと、奥さんに任せっ放しではなくて、子育てにも積極的に参加しておられますよね。

近永氏 週末は大体、僕が子どもの面倒を見ています。

まつもと そういう状況で、家庭とコミュニティ活動はどうやって両立しているんですか?

近永氏 確かに、子どもが生まれた後の方が時間はなくなっているんですが、「ruby-trunk-changes」を始めたのもそうですし、コミッタになったのももちろんそうなんですけど、「何か新しい活動をやろう」というモチベーションは、子どもが生まれた後の方が高まっています。
子どもが生まれる前までは、何かやりたいことがあってもやりたいと言いつつ結局何もやらない、みたいなこともありました。それが子どもが生まれて時間がなくなったことで「ちゃんと頑張ってやらないと何もできない」という危機感から結果的にいろいろな活動ができていると思います。

まつもと 制約があるほうがモチベーションがあがるんですね!

近永氏 そうだと思います。

まつもと そう言われてみれば、僕もRubyをつくりはじめたときって、最初の子どもがまだ5カ月という状況だったので同じような精神構造はあるかもしれないですね。

近永氏 子どもができて10年とか20年とか育てていくとすると、これから先はそういう制約が常にあるということなので、それだったらもう「できることをできるだけ頑張るしかない!」みたいな開き直りの境地です。

まつもと すっごく良い話を聞いた気がする。ある意味では子育てこそ継続力が試される持続的プロジェクトですよね。ソフトウエアの継続力なんて目じゃないかもしれない(笑)。

近永氏 そうですね(笑)。

まつもと 「Ruby20年やりました!」とか言ってるけど、世のお父さん、お母さんはそれよりずっと長い間子育てプロジェクトにかかわっている方もいっぱいいるわけだから。長期的継続プロジェクトと子育ての関係という非常におもしろい話が聞けました。