Rubyコミュニティの「新人賞」Ruby Prize

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RubyPrize2014 受賞者インタビュー、2014 Prize Winner Interview
  • 柴田 博志/Hiroshi Shibata
  • Pat Shaughnessy
  • 松本 亮介/Ryosuke Matsumoto

Ruby Prize 2014 Final Nominee 最終ノミネート Pat Shaughnessy Interview

平成26年11月14日(金) 収録

日本、松江への印象

まつもとゆきひろRuby Prize実行委員長(以下「まつもと」) Ruby Prize 2014最終ノミネート者になられたということで、おめでとうございます。そして今回初めての来日ということで、ありがとうございます。
では、日本に対する印象や最終ノミネート者に残られたことについて、どのように思っていらっしゃいますか。

Pat Shaughnessy 氏(以下「Pat氏」) まつもとさんに選んでいただいたのはとても光栄なことだと思います。そして現在、まつもとさんが住んでいる場所に来ることができて本当にうれしいです。日本に来られたことにワクワクしています。
会議が始まる前日に日本に来て、そして松江城にも行くことができました。とても美しく、築城400年のお城ということで本当に強い感銘を受けました。それから街を普通に歩いている中でも、非常にリラックスした、我が家に帰ってきたような感じがしました。外国人であるというような感じがしなかったんです。まぁ外国人なんですけれどもね。
日本人じゃないし、島根出身でもないんですけれども、でも何かここに私は居つきたいというか、帰属意識を持ったような気がしました。来られてとてもよかったです。

まつもと 温かい言葉ありがとうございます。松江の人たちもそれを聞いて本当に喜んでいると思います。

「言語の中をのぞいてみたい」という気持ち

まつもと Ruby Under a Microscopeという著書の功績でRuby Prizeにノミネートされたわけですが、この本を書こうという、モチベーションはどこにあったのですか。

Pat氏 まず個人的にRubyがどんなふうにして動くのかということ、その言語の中をのぞいてみたいという気持ちが強かったです。物事がどういう仕組みで動くかという、中をのぞくのが元々好きなので、最初は個人的なプロジェクトとして自分のためにやっていました。
以降、学ぶにつれて、Rubyを使いながらもRubyが一体どうやって動いているのかということを知らない人が非常に多いことに気が付きました。もちろん、まつもとさんやRuby開発のコアチームは、内部の動きというのは非常によくご存じだと思いますが(笑)。
そこで、Rubyの仕組みについて語るのは非常に重要なことではないかと思いました。Rubyの内側には何があるのか、まつもとさんを初めとしてチームの方が何年もかけて頑張ってこられたこと、そして非常に使いやすい、美しい言語を開発されたということ、その背景にはとてもたくさんの努力があったということをみんなに伝えたいと思いました。

まつもと 執筆作業は、お仕事を一旦休まれて、半年ぐらいでしたっけ?

Pat氏 本業のプロジェクトの合間を縫ってこの本を書き上げました。まずは、2012年に3ヵ月ぐらいを使って、また2013年に入ってからも、さらに3ヵ月程を使い書き上げました。
書くこと自体ももちろん時間がかかりましたけれども、Rubyが何であるかというのをしっかり理解するために、事前研究も必要でした。そもそも自分が理解していなければ人に語ることもできないので、その理解が一番大変でした。

まつもと 何に背中を押されて書こうと思ったのですか。本を完成させるというのは大変だと思うのですけれども。

Pat氏 みんなが知りたいと思っていると気づいたんです。まずこのプロジェクトを始める前に、私が運営しているブログの読者に投稿を通じてカジュアルな感じで語りかけてみました。そうしたところ多くの人から反響があって、「ああ、これは多くの人がこの話について知りたいと思っているんだな」と感じました。
そして、「ストーリーを語る」というのは人に何かを教えるということで、教えるというのも私は大好きなんです。特にみんなが興味を持って聞いてくれるとそれはとてもいい経験になる。このこと自体に、すごくワクワクしたんですよ。
「書かなきゃ、書かなきゃ」って、誰かに押されているというよりは、楽しんで書いているという感じが強かったです。とてもうれしい期間でしたね。