Rubyコミュニティの「新人賞」Ruby Prize

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RubyPrize2014 受賞者インタビュー、2014 Prize Winner Interview
  • 柴田 博志/Hiroshi Shibata
  • Pat Shaughnessy
  • 松本 亮介/Ryosuke Matsumoto

「業務」「コミュニティ活動」のいい関係

まつもと 会社の業務でも、ペパボ(GMOペパボ株式会社)の人たちの技術基盤、グループ、技術支援をしているという意味では、業務としてやっていることとコミュニティーのためにやってくださっていることというのは、かなりオーバーラップしていますよね。

柴田氏 相当…ほとんど同じみたいな形ですね(笑)。
昨日の講演の際も、後半はRubyの内容にフォーカスしてお話をさせていただきましたけど、あそこは社内の環境に置きかえても割と同じような状態で、例えばCIを使っていないサービスがある、という場合には、「CIを準備して、何かしらの定例作業をここに流して確認できるようにするとすごく便利じゃない?」という話をすると「それは便利ですね」という話になったりします。
他にもWindowsでRailsを起動するのが大変だという話があった場合に、手順書を用意したり、簡単なパッチファイルとかでこれをやるとWindowsでもトップページぐらいはウェブサーバーを起動して確認できるようになりますよ、という情報を教えたりしています。
環境構築は知らない人がやるとすごく時間がかかってしまいがちですが、これはプログラマーでも時間がかかるようです。OSXに詳しい人でも、LinuxでRailsを起動するとなると途端に1日使ってしまうこともあります。特にWindowsだともっと大きくて、WindowsでRailsを起動するのに2日かかりましたみたいな話もあります(笑)。

まつもと それはインストールするだけですか?

柴田氏 そうです。これは技術的な知識というか、基本的な教養として、Railsを起動するために色々勉強してそれを達成するというのは、知識レベルとしては必要ではあるんですけれども、如何せんビジネスも回さなくてはならないので、デザインや機能開発をしなくてはいけないという人が、こういったことに2、3日を費やすのはあまり価値がないなと感じています。
それが例えば、100人、200人の人が同じようなことをやっているということになると、会社のリソースがあまり本質的ではない部分にどんどん時間を費やせられていることになる。
そこで、自分が所属している基盤チームはそういった本質的ではないものにかかる時間を削減したりとか、ちょっと何かを変更したりツールを用意することでスケールメリットを効かせられるような、そういう作業をいっぱいやっています。

まつもと なるほど。業務でやっていることとコミュニティーでやっていることの切り分けや、時間の使い方の違いがありますか。

柴田氏 ほとんどないですね(笑)。僕の場合はRubyを安定してリリースすることによって会社で使っているウェブサービスがすごくよくなる、早くよくなる、スピードを持ってRubyの改善に追従していけるという部分である程度のメリットを出せているので、そこの部分は会社のほうにもちゃんと説明をしています。ずっとはやってないですね。

まつもと まぁもちろん。

柴田氏 そうですね。Rubyの2.2版を評価して、社内のウェブサービスでちょっと動かしてみて、このまま2.2が稼働してしまうと弊社のサービスが動かない(笑)というような状況があったりしたのを見つけると、笹田さんや中田さんにこういう条件で落ちるようです、ということを報告して直してもらうということが、導入期になってから時間を費やすということがなくなります。
結果としてRubyに時間を割くことが会社のメリットにならない、みたいなことは言われたことはないですね。
そういう意味では割と今のところいい感じの関係を用意できているのかなと思っています(笑)。

まつもと なるほど。そういう活動をしていて大変なことや克服しなくてはならなかったことなどがありますか。

柴田氏 やはり時間の使い方ですかね。当然仕事の、弊社で提供しているウェブサービスをよくするという部分と、RubyはRubyの方で色々な問題が、世界中で解決してほしいというような問題があると思いますが、そこはやはりある程度自分の中でバランスを取って、ちょっとRubyの方は見ないで社内の問題解決に集中しようという時間を用意したり(笑)。

まつもと しばらくはちょっと(笑)。

柴田氏 で、社内の方の問題解決に疲れたら、ちょっとイシュートラッカー眺めて、チケットの棚卸しなどをしています。

まつもと これはコメントできるかな、みたいな。

柴田氏 そんな形で分けていますね。やはり片方だけやってしまうと、例えばRubyの開発だけを1週間続けてやっていると、結構1週間の振り返り、自分の作業内容を確認したときに、社内のことを何もやってないなということがあったりして(笑)、さすがにそれはちょっと社内的に説明がつかない状況なので、それは最初に説明したように、今のところいい形でRubyをよくすると会社のサービスもよくなって、会社のサービスで試すことによってRubyの不具合も見つかってというような形が理想だと思っています。
これは片方だけを続けるとバランスが崩れてしまうので、バランスはやはり意識して気にかけるようにしていますね。