Rubyコミュニティの「新人賞」Ruby Prize 2017

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まつもと 日本人としては、Railsみたいに英語でやってるコミュニティーの中に乗り込んで行っても、なかなか存在感出せないっていうチャレンジに遭遇することはよくあることで。


上薗氏 そうですね。それで難しいというか、それが難しいからパッチを書いてるというところもあって。結構イシューとかで議論になりそうなときは、1回、そこではもう戦うのをやめるんです。
 
まつもと はい。
 
上薗氏 僕の中ではこの直し方が一番正しいと思ってるんですけど、それを議論で相手に納得させるのは難しいと思ったら、別の所から直すことによって、説明せずにこれが正しいっていうことが理解できるようになるまで、周りの理解を引き上げるっていうのを目指すんです。そうすると、これを通すための詳細な説明をすることなしに、コードだけで通せるっていうのがあって。私は、議論、苦手なんで、議論になりそうになると、これの理解を進めるために必要な他のパッチを書くっていう方法で、普通では議論なしに合意を得るのが難しいパッチとかも通してました。
 
まつもと なるほど。数多くいる、議論、少なくとも英語での議論があんまり好きじゃない日本人エンジニアにとっては、割と参考になる戦略かもしれませんね。
 
上薗氏 そうですね。
 
まつもと 多分、このインタビューの読者の方は、上薗さんの活動について十分に、把握してらっしゃらない方いらっしゃると思うんですけども、上薗さんは大体いつぐらいからRailsにパッチをどのぐらいのペースでっていうのは、大体の目安みたいなのは。
 
上薗氏 そうですね。さっきのパッチが取り込まれずに出たっていうのが、Rails4.2で、多分2014年の12月に出たと思うんです。
 
まつもと じゃあ、そのころは始めたばかり。2014年の暮れぐらい。
 
上薗氏 それからなんで、4.2が出て以降、5,0、5,1はかなりパッチを投げて。
 
まつもと じゃあ、過去2年ぐらいの間、かなりの活動。
 
上薗氏 そうですね、2年半、3年近くですね。
 
まつもと 概数でどのぐらいになるとかは、イメージがありますか。
 
上薗氏 プルリクエストの数でいうと800ぐらいですね。
 
まつもと
 ああ、じゃあ、3年弱の間に800プルリクエスト。
 
上薗氏 そうですね、アベレージでいうと。
 
まつもと 1人で。
 
上薗氏 ほとんど毎日ですね。
 
まつもと ああ、本当ですね。
 
上薗氏 そうなんですよね。
 
まつもと なるほど、すごい、それで存在感を出して、人とは違うストラテジーなので、DHHと会わずにコミッターになったと。
 
上薗氏 そうですね。
 
まつもと  どうですか、その戦略というのは、ほかの方にもお勧めですか。
 
上薗氏 これは、そうですね。議論が得意じゃないっていうのでいうと、やっぱりほかの日本人のコントリビューターの人でも、英語で説明するのが苦手だからイシューじゃなくてパッチにする、プルリクエストにするっていうほかのコントリビューターもいるんで。やっぱりコードが書ければ、英語で問題を全部説明できなくてもっていう部分はあるんじゃないかなっていう気がします。